ワンアウトも取れず……苦悩の日々に正田樹からもらった一言
お笑い芸人・杉浦双亮の挑戦記〈14〉
開幕から1カ月。立ちはだかる「プロ」の壁と、正田樹投手からのひと言。
正田樹投手からのひと言
その試合後、ロッカールームでの出来事だ。
着替えながら、ついその思いが言葉になった。
「ワンアウトを取るのって難しいなあ……」
すると、だ。前回のコラムで投手陣の中心と書いた、正田樹投手がひと言、こう言ったのだ。
「いや、向こうのバッターのほうが絶対にプレッシャー感じていますよ」
ストン、と心に落ちた気がした。
それはそうだ。芸人で、40歳の球だから打たなきゃいけない、というプレッシャーは相当だろう。打てなければ「なにやってるんだ」と監督、コーチに怒られる可能性だってあるかもしれない。
それに引き換え、僕には失うものはない。
「だったら、打てるものなら打ってみろ」
くらいの気持ちで投げればいいんだ。
そう気づかせてもらった。正田投手とは、歳が近いということもあって、ふだんから野球の話、世間話に限らず、いろいろなことを語り合い、仲良くさせてもらっている。甲子園優勝し、NPBでも新人王を獲得、アメリカや台湾といった海外チームでのプレーと、経験、実績ともに群を抜いた選手だから、チームのなかでも一目置かれているし、僕もすごく刺激を受けていた。
そんな彼の言葉だったことも、心に響いた要因かもしれない。
正直に言えば、ここのところは「苦悩の日々」だ。
アウトひとつ取れないような状況や、結果を出せないという現実、技術的なこと体力的なことと、まだまだ足りない部分がたくさんあることを痛感する。
試合が終わって、まっすぐ家に帰宅すると午前一時近いこともあるし、グラウンド整備やベンチの片づけなど、すべてを選手たちは全員で行っている独立リーグは野球だけをやればいい、という世界ではない。覚悟してきたことだけれど、芸人としての収入がないことは、経済的にもギリギリだったりする。
それでも、こうしたひと言がもらえたり、心から悔しいと思い、もっと頑張らなきゃと思える経験をできることは、かけがえのないものなんじゃないか、とも感じる。
真剣でありながら、楽しんで野球をしたい。
チームの勝利に貢献できる選手でありたい。
なんだか、ちょっといろいろと考えた一週間だった。
前期日程も残すところわずか。首位争いはし烈だ。必ず優勝したいと思う。
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