「ジャニー喜多川告発騒動」に見る後出しじゃんけん的「ミートゥー」運動の悲哀【宝泉薫】
◾️ジャニー喜多川を告発した元アイドルの「死の前日」のブログ
1988年に「光GENJIへ」を書いてジャニーを告発した元・フォーリーブスの北公次も、その後、事務所と和解。死の前日には、ブログにこう綴った。
「そして最後にどうしても言わしていただけるなら ジャニーさん メリーさん ありがとうございました 感謝しています」
若き日のジャニーに最も可愛がられたと自負する彼の愛憎なかばする思いは最後に「感謝」へと収束したのだろう。
なお、今回の騒動に、北が起こした騒動ほどのインパクトはない。にもかかわらず、ミョーにくすぶっているのは、新たな要素が加わって話をややこしくしているからだ。
北の騒動は当時、田原俊彦のスキャンダルをめぐってジャニーズに敵意を持っていたAV監督・村西とおるが仕掛けたものだった。つまりはけっこうシンプルな対立構図だったのだが、今回はそうではない。
まずは「ポリコレ」という時代の流行。そこに乗っかることで、メディアがジャニーのような人を叩きやすい空気が生まれている。この件の報道をめぐって以前、ジャニーズと裁判沙汰にもなった「文春」にとっては、ここぞとばかり、問題を再燃化させる好機と見たのだろう。
こうしたメディアは海外にも存在する。英国のテレビ局・BBCだ。
今回の騒動のもうひとつの火付け役だが、ジャニー問題をめぐるメディアの忖度事情を探るべく、元アナウンサーの長谷川豊に声をかけたりしている。数年前「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!」と主張し、物議をかもした人だ。
BBCにとって、異国のスキャンダルはまさに対岸の火事。自国民の反感を買う心配もなく、流行りの「ポリコレ」爆弾でお手軽に燃やせる格好の話題なのだ。
さらに、ポリコレの有効性を知り抜いた人たちも食いついた。いわゆるフェミニストだ。
騒動のなかで「PENLIGHT(ペンライト)ジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」が設立された。メディアでは「ジャニーズファンらによる有志の団体」などと紹介されているが、その実態はフェミ活動家連盟。二次元キャラを使った町おこしなどに対し「性的搾取」だといったクレームをつけ、炎上させるのが大好きな人たちの集まりだ。
群馬県草津町の女性町議が男性町長からワイセツ行為をされたと訴えたものの、狂言だったことが発覚して「冤罪」として決着した事件でも、フェミ活動家の暴走が話題になった。この人たちはとにかく「性的搾取」に敏感なので、ジャニーと少年たちとの構図にも似たものを感じて、イケると判断したのだろう。
なお、フェミ活動家たちは政界における野党勢力とも親近性があり、早速、立憲民主党が国会でカウアンらの聞き取り調査を行ったりした。ジリ貧の党勢をなんとかすべく、この騒動を利用しようとしているわけだ。
とまあ、メディアにフェミ、野党など、もっぱらファン以外の層で盛り上がっているような印象さえある。ただ、ちょっと切実なのは、途中でジャニーズを嫌いになった人たちだ。