なぜあなたの腕時計は「チクタク」という音がしないのか?
【世界一わかりやすい時計の話 Vol.1】とっても奥が深い腕時計の世界。ウンチクから注目のモデルまで、わかりやすく解説します。
第一回のテーマは「機械式腕時計」。近年再評価され、ファッショニスタの腕元を続々と彩っている注目の機構とは?
よく時計の動作音を「チクタク」と表現しますが、みなさんの腕時計は音がしますか? おそらく多くの人の腕時計はほとんど音を立てずに時を刻んでいるはずです。なぜなら世の中に存在する時計は、ほぼすべてと言っていいくらいの割合で「クォーツ式」という電池駆動の時計で占められているからなんです。この「クォーツ式」という時計機構は、静かなモーターで針を動かしたり、ICチップと液晶で時間をデジタル表示するため、音がしないんですね。でも、電池式の時計が生まれる前は、時計はみな、チクタクという音はさておき、独特の動作音がしていました。それが、ゼンマイを動力源として、歯車を組み合わせて作られた「機械式腕時計」なんです。
実は、みなさんもよく知っている、ロレックス、オメガ、タグ・ホイヤーといった高級ブランドの時計は機械式が大半。一時は時代遅れと言われた機械式時計ですが、今や機械式であるということは一種のステータス。値段もお高めなものが多く、機械式を着けていると、「おっ」という目で見られることもしばしば。(もちろん機械式でも安価なモデルはあります)
で、肝心な使い心地はというと、正直、精度(時間の進み遅れ)は電池式のクォーツ時計に全く歯が立ちません。何百万円もする機械式時計でもだいたい一日で15秒ぐらいは進んだり、遅れたりします。1万円の電池式クォーツ時計だって月に何秒狂うかという程度。それを考えると秒単位でスケジュールを入れている人は(いないとは思いますが)、機械式を買わないほうがいいでしょう。機械式の利点を挙げるとすると、ゼンマイで動くので電池交換が不要、ちゃんと手入れすれば電池式より長く使えるなどがありますが、ぶっちゃけ最大のメリットは、どや顔できるということでしょう。この人違う感は半端ありません。もはや自己満足の世界とも言えるのですが、レガシーな機構のアイテムをわざわざ買うということは、余裕のある証。大人になったらぜひみなさんもチェックしてみてください。
最後に機械式時計の簡単な見分け方を。クォーツ式時計は秒針が一秒ごとに止まっては進み、止まっては進みというふうに動くのですが、機械式は連続して動きます。余裕のありそうな素敵な大人を見つけたら腕元を凝視してみてください。