岡崎慎司と内田篤人の共通点 「サッカー選手の成長」とは
「現役目線」――サッカー選手、岩政大樹が書き下ろす、サッカーの常識への挑戦
できないことはやらない内田篤人選手のすごさ
彼は、僕が3年目のシーズンに、即戦力というよりは、将来性を買われて鹿島アントラーズに入団してきました。大卒で入団した僕とは6歳の歳の差がありました。
まだあどけなさの残る華奢な高校生、という感じでしたが、当時のアウトゥオリ監督に見出された内田選手は、開幕スタメンを飾りました。彼は右サイドバックで、僕はその隣を担当していたので、自然に彼の面倒を任されました。
当時は、僕も加減を知らず指示を出していた頃です。その頃のアントラーズのスタメンに歳下が入ることはあまりなかったので、今思うと彼には随分厳しく当たった気がします。特に、守備のポジショニングや考え方については口うるさく指示していました。
それに対して、内田選手は、いつも大体左手をそっと挙げながら、「分かりました」というジェスチャーはしていました。頭のいい選手なので、僕が言っていることは理解していたと思います。しかし、試合では、自分の中で(理解はしていても)今できないと判断したことはしないのです。しっかりと今の自分にできることとできないことを区別した上で、自分のリズムを崩さない程度に、少しずつ取り入れているように見えました。
結果、2年間コンビを組んだあたりでしょうか。僕が彼に言うことは何もなくなっていました。たとえ問題があっても、二人で目線を合わせたり、一言交わせば全てを分かりあえる関係だったと思います。後にも先にも、あそこまで僕の守備の考え方を理解して実践できた選手はいませんでした。
こうした選手たちと接してきて思うのは、プロになってからの差とは、自分にできることの表現の仕方を知り、できないことの隠し方を知っているかどうか、ということです。何かを持っているとか、持っていないとかではないのです。
僕たちは成長が止まってしまえば、小さい時からずっと続けてきたサッカーを辞めなくてはいけません。それは若い選手もベテランの選手も同じです。
ピッチの中で自分を表現するために、それぞれがその時々で考え、取り組む「成長」の形に、その選手の生き方や考え方が表れているように思います。