マッチングアプリを始めた頃から緩やかに何の意味も持たない “経験人数” だけが増えていった【神野藍】第7回
神野藍「 私 を ほ ど く 」 〜 AV女優「渡辺まお」回顧録 〜連載第7回
【一つ上の恋人ができたときに強く思ったこと】
季節は巡り、クリスマスを迎える少し前に、一つ上の恋人ができた。私が欲しいと言ったピアスのために日払いのアルバイトを始めるような人だった。恋人ができた喜びよりも「もう誰か適当に探さなくて良いんだ」という気持ちの方が強く、ある種の平穏を手に入れたような気がしていた。
二年生に進級してすぐの頃、インターン先の組織体制が変わり、徐々に周りのメンバーが辞めさせられていく中で、私だけがグループ会社に移動することになった。それからの日々は忙しなく過ぎていった。社員と変わらない仕事量と裁量権を渡され、くらいついていくのに必死だった。そのころぐらいから仕事にのめり込んでいくようになった。
友人との飲み会に行く回数は減っていったし、恋人からは寂しさが乗じたのもあるだろうが、「たかがインターンなのに、そんなに必死になる必要がある?」なんて言葉をかけられるようになった。それでも別に気にしていなかった。働いた分だけ自分のできることが増えていって、成果をきちんと出すと評価もあがる。きちんとそれに見合う分の報酬はもらっていたし、それに加えて、少々無理をしても大丈夫なくらい身体が丈夫だったのもあって、一日中頑張り続けるのも苦ではなかった。