恥ずかしながら、誰よりもたくさん婚活をしてきた。こんなに出会えるのにどうして成婚できない?【石神賢介】
アプリ、相談所、パーティー、バスツアー……。いとも簡単にマッチングできる現代の婚活事情
◾️「あなた、バカ?」
南無妙法蓮華経美人の次にマッチングした女性は、40代前半の外資系の会社員。大きな瞳、長い黒髪……、プロフィール写真の容姿が好みのタイプだった。
15歳くらい年下の女性とのマッチングは難しいとは思った。でも、可能性はゼロではない。実際に、20歳以上下の女性と交際したこともある。申し込むのは自由。いやなら無視するだろう――という判断は、しかし甘かった。
彼女とマッチングしてお礼のメッセージを送ると、想定外のレスポンスが届いた。
「はじめまして。なに目的ですか? まさか還暦のかたが恋愛目的で15歳年下の女性に接近はしないと思い、聞いてみました」
こちらの期待とはまったく異なる反応に動揺した。
「すみません。恋愛目的です」
腰を低くして、レスポンスする。
謝る場面ではないが、卑屈になっている。
「さらにうかがいますけれど、ご自身は75歳の女性が恋愛対象になりますか? いずれにせよ、手が届くと思われ、いい薬になりました。あなたのような人からアプローチされないように、私はもっと女を磨きます。お願いだから、同年代を狙ってください。自己肯定感が下がって傷つきます」
自分が地雷を踏んだことを確信した。
「ごめんなさい」
ただただ謝る。そんな自分に自分ががっかりさせられる。
「あなたバカなの? 容姿、収入、学歴がそれなりに高い女性が15歳年上とお付き合いするなどありえません」
容姿、収入、学歴がそれなりに高い女性、と自分で言えるとはなかなかタフだ。それ以上レスポンスする気力はなかった。
この〝あなたバカなの?〟のメッセージの直後、彼女からはアプリでのメッセージ交換をブロックされた。こちらを罵倒したいがためのマッチングだったのだ。このジジイに厳しく指導してやらなくてはと思ったのだろう。
婚活アプリにはいろいろな人がいる。若い人もいれば、高齢者もいる。容姿に恵まれた男女もいれば、そうでない男女もいる。貧しい人もいれば、贅沢な人もいる。現実社会の縮図といっていいだろう。