恥ずかしながら、誰よりもたくさん婚活をしてきた。こんなに出会えるのにどうして成婚できない?【石神賢介】
アプリ、相談所、パーティー、バスツアー……。いとも簡単にマッチングできる現代の婚活事情
◾️前途多難
そうかと思うと、お金よりも本能優先の女性もいた。
40代後半の看護師さんとマッチングしたら、その日にはもう会いたいという。こちらもうれしくなり、都内で食事をした。彼女には一度婚歴があり、子どもは二人。どちらも成人しているという。
食事の後、送ってほしいと彼女に言われた。こちらはクルマで移動していた日だった。彼女の自宅は近いらしい。気持ちよく応じた。
ところが、駐車場でクルマに乗ったとたん、助手席からガバッと抱きしめられ、ブチューッと唇を吸われた。
「ちょっと、ちょっと待ってください! 心の準備も身体の準備もできていません」
とっさに唇を離し、抵抗を試みる。しかし、許されない。
「いやなの?」
「いやではありません。光栄です。でも、次にしませんか……」
言い終わらないうちに、またブチューッときた。今度は舌を入れてくる。困ったことに、気持ちよくなってきた。
それを察知した彼女の手がこちらの股間に伸びる。
「準備できてるみたいですよ」
彼女がにっこり笑う。こちらは言い訳もできない。
そんなやりとりをしているうちにシャツのボタンをはずされた。
「あああ……」
「なにが、あああ、よ」
彼女が今度はケラケラ笑う。そして、シャツのボタンをはずされていく。
暗いとはいえ、広い駐車場には、ほかにもたくさんクルマが停まっている。人影もある。さすがに恥ずかしい。
「やっぱり次回にしませんか……」
「意外と意気地ないんですね」
「はい。小心者です」
そこでやっと許された。
びっくりした。食事をしているときは、そんなふうに攻めてくる気配はまったくなかった、と思う。
婚活アプリはエキサイティングだ。そして、前途多難だと思った。
(最新刊『婚活中毒』より 抜粋)
文:石神賢介