「集中力」とは “好奇心” があれば無意識に発揮される力。大人になってようやく分かるファーブルのかっこ良さとは【大竹稽】
大竹稽「脱力の哲学」4 〜集中力の正体〜
◾️あなたが「集中し続けなければならない」理由って何ですか?
もう一つあります。ファーブルは昆虫観察に集中していますが、いつでもそれをやめられる状態にあります。状況の変化をシャットダウンしてしまうような、閉じた集中ではありません。天気などの状況の変化に柔軟に応じられる状態です。「集中し続けなければならない」理由など、そもそも、彼にはなかったのです。
集中力とは、本来、主体的選択的な力であるはずです。しかしわたしたちは、このような本来性をごまかしながら仕事をしています。そんな仕事も必要でしょう。しかし、わたしたちに天性のものとして備わっている好奇心を、再度、働かせる時間をつくってみませんか?
ファーブルの昆虫観察が、学校の課外活動になってしまったら、どうでしょう? この活動レポートを提出しなければならず、そのレポートによって成績評価がされるとしたら? レポートと成績のために「集中」できるかもしれません。しかし、これは受動的な状態です。とはいえ、レポートをサボることはオススメしません。成績のためにがんばることも重要です。いっぽうで、成績から離れた環境、自分の好奇心が示す環境に身を置いてみましょう。どれだけ他人には退屈に見えても、自分の好奇心に素直になってみましょう。まさに子どもの心を取り戻すのです。
もう一人、偉大で異色の研究者を紹介します。リチャード・ファインマンです。アメリカを代表する物理学者で、朝永振一郎、ジュリアン・シュウィンガーと、1965年にノーベル物理学賞を共同受賞しました。多くの人が学者に対してもつ分別臭いイメージからは程遠く、好奇心とイタズラ心が彼の魅力だったようです。
「おしっこは重力によって身体から自然に放出される」のかどうかを検証するために、逆立ちしておしっこをしたという逸話まで残っています。ノーベル賞を受賞した際には、その知らせが朝の三時にかかってきたときに「今眠い」と言って電話を切ってしまったそうです。
さて、ファインマンさんの代表的な著作といえば、カリフォルニア理工科大学での授業をまとめた『ファインマン物理学』でしょう。日本語訳も岩波書店から全5巻で出されています。高校時代にこの本に触れて、物理学を専攻することを決めた人も多いと聞きます。この本でファインマンは、学生たちに問いかけながら、リズミカルに授業を進めていきます。