月に一度 “謎の発作” に襲われていた私。AV女優引退後、症状は緩和されたのか?【神野藍】
神野藍「 私 を ほ ど く 」 〜 AV女優「渡辺まお」回顧録 〜連載第11回
【女優時代は月に一度、発作が起こっていた】
このような発作みたいなものは女優時代に月に一回程度起こしていた。そのぐらいの頻度、かつ絶対に自分にとって安全地帯でしか起こさず、加えて収まってしまえば急に憑(つ)き物がとれたかのように元気になるのを分かっていたので、何か対処をしなくても大丈夫と特に問題視はしていなかった。それは私にとってもだし、一緒にいる人にとっても「気が済むまで付き合おう」ぐらいの気持ちであった。
原因に関しては何となく心当たりがあったものの、汚いものには蓋をするではないけれど、考えたくないことは全て頭の隅にひとまとめにして、見て見ぬふりをするようにしていた。それが一番苦しまずに済むし、そうすることが自分を守るためだと信じきっていた。色々なことに気がついて、ある意味「正気」に戻ったら、きっと自らが抱える全て―女優という仕事にも大事な人たちに深い苦しみを与えたことなどに対して耐えられなくなると、心のどこかで悟っていたからだ。
しかしながら引退して、発作は緩く長く続くものに変化した。すぐに収まるのではなく、何となく調子がおかしいという状態を引きずっていた。何かができないわけではないけれど、いつもの半分ぐらいの力でしか物事を対処できない、そんな毎日であった。なぜそうなったかについて、何となく察しはついていた。怒涛のような日々や「AV女優である私」から放り出されたことで、「私」に費やせる時間が無限となってしまったからだ。
これまでの生活スタイルとは打って変わって、家の中で黙々と仕事をするようになり、必然的に一人になる時間が増えた。一人でいるとふとした瞬間に色んなことを考えてしまう。自分の未来について、思考を停止させていた過去について。そして一度ぐるぐると考え始めたら、なかなか途中で脱することはできなかった。