山下達郎やデヴィ夫人にもいちゃもんをつけた、ジャニーズ憎しの「ジャニーガー」たちがそれを「忖度」だと思い込む理由【宝泉薫】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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山下達郎やデヴィ夫人にもいちゃもんをつけた、ジャニーズ憎しの「ジャニーガー」たちがそれを「忖度」だと思い込む理由【宝泉薫】

 しかし、彼らを叩いている人たちにはそこがわからない。実際には好き嫌いで動いているにもかかわらず、世の中に善悪がある、あってほしいと願っているからだろう。それゆえ、彼らの決めた「悪」に味方している人まで「悪」に思えてしまうのである。

 そこで生まれるのが「忖度」という発想。悪を擁護するのは、何か事情があってそうしているのだろうという、自分を納得させるためのものだ。

 ちなみに「忖度」という言葉が広まったのは、数年前のモリカケ騒動がきっかけだった。あのときも勝手に善悪を決めたがる人たちが、大嫌いな安倍晋三首相(当時)を叩くために動き、納得できないものを「忖度」だとして騒ぎまくった。それがあの暗殺事件にもつながったかと思うと、問題は根深い。

 なお今回、山下達郎に噛みついた松尾潔は昨年、日本共産党の機関紙「赤旗」に登場して、候補者を絶賛したりしていた。また、今回の騒動が勃発してすぐ、そこに飛びつくように結成された「PENLIGHT(ペンライト)ジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」は実質的にフェミニストの集まりだ。左翼もフェミも好き嫌いを善悪にすりかえ、嫌いなものを悪として叩くところが共通しているし、顔ぶれもかなり重なっている。「アベガー」も「ジャニーガー」も同じ穴の狢なのだ。

 そこで、こうした勢力を警戒する声も上がっている。「賛同者、段取り、登場人物と構造を覚えててほしい。同じ手法で村を焼かれるぞ」とか「ここで食い止めないと、慰安婦問題レベルに拡張されますよ」といったものだ。筆者も同感で、そういう勢力から芸能を守りたいと思う。

 そういえば、山下やデヴィの発言にも、芸能への愛情や理解が垣間見える。

「芸能というのは人間が作るものである以上、人間同士のコミュニケーションが必須です。(略)人間同士の密な関係が構築できなければ、良い作品など生まれません」(山下)

「ジャン・コクトーがジャン・マレーを愛したように、そのような特別な世界、関係性というものはある。(略)昨今の流れは偉大なジャニー氏の慰霊に対する冒涜、日本の恥である」(デヴィ)

 という具合だ。密なコミュニケーションも特別な関係性もときに衝突や軋轢を生むが、それも産みの苦しみというやつである。そもそも、人間だって生き物なのだから弱肉強食が前提であり、それが過激になりすぎないようにと設けられているのが法律だ。

 その範囲内でギリギリのところを攻め、弱肉強食の世界の美しさや哀しさを劇的に浮かび上がらせる――。そういうところもまた、芸能の醍醐味であることを改めて確認しておきたい。

 

文:宝泉薫(作家、芸能評論家)

 

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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