どの席に座るか問題【新保信長】『食堂生まれ、外食育ち』35品目
【隔週連載】新保信長「食堂生まれ、外食育ち」35品目
✴︎連載50回分が待望の書籍化『食堂生まれ、外食育ち』、絶賛発売中!
けれど、そんな気が利く私(小心者ともいう)と違って、細かいことは気にしない人もいる。ちょうどランチタイムの時間帯に近所のチェーン店レストランのカウンターで食べていたら、20代半ばと思しき女子が一人で入ってきた。店員さんが「空いてるカウンター席へどうぞ」と声をかけるも、その女子は入口に一番近い4人掛けのテーブルに直行、まったくためらう素振りもなくドカッと腰を下ろしたのである。
店自体そんなに込んでもいなかったので特に問題はないのだが、カウンターもあれば2人掛けのテーブルもあるのに、4人掛けに迷わず座れる度胸がすごい。自分には到底無理である。しかも、注文したかと思ったらバタッと突っ伏して寝だしたのだ。思わず呆気にとられる豪傑ぶり。徹夜明けか何かでよっぽど眠くて、一番近い席にたどりつくのがやっとだったのか。
夜中のファミレスなら寝ちゃってる人も珍しくないかもしれないが、白昼堂々の爆睡はあまりないのでは?(知らんけど) あのまま寝てたら店員さんは起こすのだろうか。彼女の注文が運ばれてくる前に店を出てしまったので、その後どうなったのかはわからない。食べ終わったのに長居するのは申し訳なくて、結末を見届けずに退出してしまうところがまた、私の詰めの甘いところである。
文:新保信長
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✴︎KKベストセラーズの7月新刊✴︎
新保信長 著『食堂生まれ、外食育ち』
作家・平松洋子さん推薦!!
「気配をスッと消し、食の現場をニヤリと斬る。
選ばしし外食者の至芸がすごい。」
外食歴50年超の著者が綴る異色の外食エッセイ!
一口に「外食」と言っても、いろんなシチュエーションがある。子供の頃に親に連れていかれたデパートの大食堂。夜遅く仕事帰りに一人で入る牛丼屋。ここぞというデートや記念日に予約して行ったレストラン。気の置けない仲間と行く居酒屋。たまの贅沢のカウンターの寿司屋。出先でたまたま入った定食屋。近所のなじみの中華屋や焼き鳥屋……。
誰もが心当たりあるような懐かしくも愛しき「外食の時空間」への旅が始まる!
カバー&本文イラスト描いたイラストレーターおくやまゆかさん。
イラストが最高に愉快!(全50点収録)
目次
序 「今日のごはん何?」と聞いたことがない
第1章 ノスタルジア食堂
1品目|外国人と鴨南蛮と中華そば
2品目|ランチタイム地獄変
3品目|「天丼」と「うどん天」と「シマ」
4品目|出前とデリバリー今昔物語
5品目|おでん定食というギャンブル
6品目|ハンバーグ記念日
7品目|おいしい味噌汁の条件
8品目|最高のおやつ
9品目|校外学舎の悲しき夕食
10品目|わんこスイカ
11品目|ところ変われば品変わる
12品目|「恵方巻」と「丸かぶり」
13品目|ちくわぶとはんぺん
14品目|「肉じゃが=おふくろの味」って誰が決めた?
15品目|スマホがなかった時代
16品目|Gに気をつけろ!
第2章 私が通りすぎた店
17品目|あの素晴らしい寿司屋をもう一度
18品目|気まぐれすぎる女将
19品目|選択肢のない店
20品目|日本一大きいビアガーデン
21品目|カニ・マイ・ラブ
22品目|国会図書館でナポリタンを
23品目|夫婦の肖像
24品目|サハリンの夜
25品目|インドで大炎上
26品目|開幕前の至福の宴
27品目|私がスポーツジムに通う理由
28品目|かわいそうな寿司屋とその弟子
29品目|残業メシ格差
30品目|よそンちの食卓はつらいよ
31品目|大食いと早食い
32品目| BGMも味のうち?
第3章 外食の流儀
33品目|大盛りはうれしくない
34品目|取り皿問題
35品目|デザート嫌い
36品目|お熱いのはお好き?
37品目|器のTPO
38品目|あんまり尽くされても困る
39品目|スパゲティがパスタに変わった日
40品目|何をかけるか問題
41品目|どの席に座るか問題
42品目|酒飲み認定
43品目|11人きた!
44品目|硬と軟
45品目|人はだいたい同じものを注文する
46品目|トングどっち向きに置く?
47品目|箸と愛国
48品目|ステキなタイミング
おわりに 入れなかったあの店の話