国力、国益を考えない連中が「安倍的なもの」を生み出し、日本をビッグモーター化させている【池田清彦×適菜収】
【隔週連載】だから何度も言ったのに 第45回 :『安倍晋三の正体』をめぐって(対談前編)【池田清彦×適菜収】
■維新の会とナチスの構造
池田:全くその通りですね。その流れで出てきたのが維新の会です。維新のやり方は、ほとんどヒトラーがやったのと同じ。自民党よりも維新のやっていることのほうが露骨です。20年、30年前の政治家は、少なくともhonesty(正直さ)を持っていた。「嘘をついた」と言われるのが嫌だったわけですよ。嘘をついたとしても「嘘ではない」と言い張り、誤魔化していた。でも今は、嘘をついたと言われても、恥とも思わない。西洋はキリスト教が一神教でやっているから、嘘をつくことに関しては、かなりのタブーがある。酷い嘘をつくと大臣をクビになったりする。今の日本は嘘がばれても平気。すごい国になったなと思いますよ。
適菜:イギリスのボリス・ジョンソンも、嘘をついたとして、とっちめられましたからね。日本は完全に底が抜けたと思います。2021年の総選挙のときに、維新の馬場伸幸がテレビ番組や街頭演説で「私立高校も、大阪では完全に無償」とデマを流したんです。現状は所得制限があり、入学金なども必要なので大嘘もいいところですが、この件に関し追及された馬場は「言いぶりというのはありますよね。選挙の時ですから」と完全に開き直りました。要するに、選挙期間中なら嘘をつくと。そもそも、維新は嘘とデマ、プロパガンダにより大阪で拡大した大衆運動です。ああいうものを野放しにしているのが今の日本です。
池田:今、話題になっている車の買取りのビッグモーターの社長もそうでしょう。嘘でもデタラメでもとにかく儲かればいい、だめになれば逃げればいいと思ってる。今の政治家も日本がだめになったらカネ持って逃げればいいと思っている連中が多いと思う。そういう政治家に支配されているのだから、国家の体をなしていないよね。
適菜:大衆の心の負の側面を悪用して拡大するというナチスの手法を維新は忠実に実行していると思います。私は、ナチスという「絶対悪」を利用して、政治家にレッテルを貼るやり方は、思考停止を招き、間違うと思う。その上で言いますが、ナチスの手法、維新の手法を知れば知るほど、酷似していることがわかります。
池田:嘘をつく能力があるだけの人がのし上がっていくのはナチスもそうでしたね。そういう構造はどこから出てくるのか。国によって簡単にナチス化する国となかなかしない国があって、そういう点でドイツと日本は似ているところがあるのかもしれませんね。
適菜:維新は新興の地域で拡大しています。大阪でも古くからある町に住む、地元に根ざした、確固とした生活がある人は簡単に騙されなかった。彼らはふわっとした空気に流されにくいというのがありますよね。
池田:もともと大阪にいた人たちは、自分たちの商売のやり方もあるし、維新のやり方では成り行かないこともわかる。でも、外から入ってきて高層マンションに住んでいるような人は、「公務員は給与をいっぱいもらっていてけしからん」「税金を勝手に使っている」といった適当な言説に騙されてしまう。でも、実際に税金を勝手に使っているのは維新の政治家だよね。