国力、国益を考えない連中が「安倍的なもの」を生み出し、日本をビッグモーター化させている【池田清彦×適菜収】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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国力、国益を考えない連中が「安倍的なもの」を生み出し、日本をビッグモーター化させている【池田清彦×適菜収】

【隔週連載】だから何度も言ったのに 第45回 :『安倍晋三の正体』をめぐって(対談前編)【池田清彦×適菜収】

適菜収

 

適菜:維新をはじめ、あの類の連中の特徴は大言壮語することにあります。荒唐無稽な目標を定めることで、運動を持続させようとする。「大阪都構想」だって住民投票が通っても、大阪が都になるわけではなかった。大阪市が特別区に解体されるだけだったのに、維新は確信犯的に嘘をつき、大阪がニューヨーク、ロンドン、パリ、上海、バンコクと並ぶ大都市になるといったデタラメな話で盛り上げ、大阪市の財源を狙ったわけです。その背後には竹中平蔵や菅義偉、安倍のような人物がいた。先ほどの大衆運動の話と同じで、社会に蔓延する悪意、不安、ルサンチマンが、維新のようなものを生み出したのだと思います。維新とその周辺は凶悪犯罪を含めて、数多くの問題を引き起こしています。これはTwitterにも書いたのですが、「なぜ維新の会は問題を起こす人物が多いのか」と問うのは間違いで、問題を起こすような人物だから維新に接近していくのです。遵法意識や社会性の欠如。維新にとって有権者は詐欺によって騙す対象でしかありません。

 

池田:そこは日本が貧乏になっていることとパラレルになっている。どこかに「自分たちよりうまく儲けている奴がいる」と思って憤慨するのだけど、それが維新や竹中のような奴であることには気づかない。そういう人がターゲットにされている。「公務員の給料を減らせ」といった類の言説に騙されてしまう精神構造は、江戸時代にだいぶ魂を抜かれたからかもしれないね。日本は市民革命を経験しなかったので、不満をぶつける対象は、自分たちよりちょっと上の暮らしをしている人になる。だからトップの連中の悪行が目に入らないわけだ。フランスみたいにデモもしないし。

 

適菜:先ほど先生に紹介頂いた『ニッポンを蝕む全体主義』に書きましたが、日本の近代化は内発的なものではなかった。むりやり鎖国を解かれて、西洋に巻き込まれていった。だから、近代化に付随して発生する「個人」が日本ではうまく成立しなかった。その一方でマイケル・オークショットが言う「できそこないの個人」「反個人」が拡大していった。オルテガ・イ・ガセットが定義した「大衆」も同じです。要するに、隣の人と自分の価値観が似ていることに安心するような人です。確固とした自分というものがなく、世間体ばかり気にしている。前近代的な共同体から切断され、不安に支配された大衆は、自分をしばってくれる、管理してくれる強いリーダーを求めるようになる。政治はこうしたニーズに応えることにより変形していく。こうした「根無し草」の大衆が全体主義の土壌になるわけですね。

 

池田:まったくその通りです。1960年代、70年代に日本が経済大国になっていった要因はいろいろあるけど、日本人が横並びでもって自分の意見を言わないでやっていくのが当時の工業製品を作るうえでは一番適応的だった。しかし、それはいつまでも通用しない。それで外国に追い越されていったわけですよ。それは教育のせいでもあったんです。教育はひたすらバカな人間を量産するという文科省の方針でやった。「上の言うことを聞いていればいい」と思っている人間は工業化社会の中で奴隷労働をさせるのにはいいが、新しいことを考えたり、イノベーションを起こしたり、何か変なおもしろいことをやるのにはまったく適しなかった。そういう人間を叩いてきたわけだよ。スティーブ・ジョブズにしてもビル・ゲイツにしても日本にいたら落ちこぼれだよね。そう考えると日本は江戸時代から明治、大正とずっと変わっていない。自分たちで決めることができなくて、上に先導されると右でも左でもいいから「わーっと」ついていく。それでも第二次大戦前までは国家という発想があったから、トップの連中は満州国でも何でも作って、戦争に勝って世界を支配して自分たちの力を上げようとしたんだけど、今の日本はトップが国が潰れようが知ったことではないという感じだよね。それを示したのが安倍政権です。

 

【後編に続く】

 

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適菜 収

てきな おさむ

1975年山梨県生まれ。作家。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志との共著『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか』、『遅読術』、『安倍でもわかる政治思想入門』、『日本をダメにした新B層の研究』(KKベストセラーズ)、『ニッポンを蝕む全体主義』『安倍晋三の正体』(祥伝社新書)など著書50冊以上。「適菜収のメールマガジン」も好評。https://foomii.com/00171

 

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