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ヘーゲルの「弁証法」で考える日本の退化

齋藤孝さんの新刊『使う哲学』より、日常で使える哲学の思考法を伝授します。

自動的にはアウフヘーベンしない

 日本の現代の問題を見た場合、果たして歴史は、ヘーゲルの言うように進歩しているのか、という疑念も沸き起こります。70年代のほうがよかったんじゃないか、進んでいたんじゃないかと思ったりもします。

 ヘーゲルの弁証法では、矛盾点や問題点を抱えたときには、それを統合しながら、高次の世界に進むことができることになっていますが、それは自動的に起こることではないのでしょう。私たちが知恵を出し合って、止揚(アウフヘーベン)していかなくてはいけないものなのだと思います。

 考えてみると、フランス革命も、自動的に、自然発生的に起きたわけではなく、勇気と行動力のある貴族や市民が立ち上がったからこそ起きたことでした。

 さらにいえば、彼らの行動の背景には、哲学者で啓蒙思想家であるジャン=ジャック・ルソー(1712年〜1778年)の思想の影響があります。そういう意味では、思想・哲学が歴史を動かしたといえます。

 また、身分制度を嫌った福沢諭吉は「門閥制度は親の敵で御座る」と『福翁自伝』に書き、それを打ち倒す行動に出ました。福沢にも啓蒙思想家の一面があります。

 世の中がよくないと思うのなら、愚痴や不平を言うだけでなく、行動に移す。そうすることが弁証法的な進歩につながっていくように思います。

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齋藤 孝

さいとう たかし

明治大学文学部教授。



1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士を経て、現職。専門は教育学、身体論、コミュニケーション技法。



250万部を超えるヒットとなった『声に出して読みたい日本語』シリーズ(草思社)のほか、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『大人の精神力』、『10歳までに身につけたい「座る力」』(いずれも小社刊)など著書多数。


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