なんと優勝、胴上げメンバーに……
お笑い芸人・杉浦双亮の挑戦記〈16〉
ひとつの声でチームが変わる。前期優勝を果たすなかで見つけた野球の面白さ
◆優勝をあきらめかけた瞬間
2週間ほど前の5月28日。僕たち愛媛マンダリンパイレーツは前期優勝を決めた。
昨シーズン総合優勝を果たしていたチームだったけれど、前期優勝は球団創設12年目で初めてのこと。勝ち負けを争う世界にいるわけだから、一番に立ったことは、ただうれしかった。
僕が入った年に初めての偉業を成し遂げることができたことも、喜びをより強くしてくれた。もし今年、結果が出ていなければ「杉浦なんかを取っているからだ」と言われるかもしれない。僕自身は、自分の挑戦を卑下するようなところはなかったけれど、そう思うかもしれない人がいることは想像できた。だから、勝ったという事実は僕にとって大きかった。
とはいえ優勝までの道のりは、ありきたりな言葉かもしれないけど、平坦ではなかった。いまだから言えるけど「優勝は難しいかもしれないな」というような雰囲気が漂った時期もあった。そんな状況から這い上がって勝ち取った優勝には野球の醍醐味がつまっていたように思う。
今回は、愛媛マンダリンパイレーツの優勝までを振り返りながら、そんなことについて書いてみたい。
優勝が遠のいた、と僕が一番強く感じた日は5月11日のことだ。
前日、首位をし烈に争う徳島インディゴソックスに4対0と完勝をして迎えた第二戦。試合は、愛媛マンダリンパイレーツのペースで進み2対0で8回を迎えた。
8回表、先頭の9番打者にフォアボールを出し、1、2番を打ち取るも3、4番にまたフォアボール。ツーアウト満塁となって打席には5番の張泰山(ちょうたいざん)が入った。
知る人ぞ知る、台湾野球界のスーパースター。台湾リーグ歴代通算最多安打(2134本)、最多本塁打(289本)、最多打点(1338打点)の記録を持つ彼もまた40歳を迎える2016年から四国アイランドリーグの徳島インディゴソックスに加入をしていた。ワンボールワンストライクとなったあとの3球目、張泰山の打球はスタンドへ吸い込まれていく。
逆転満塁ホームラン……。
悪い流れは続き、9回表にもヒットやエラー、フォアボールが絡み4失点。チームはそのまま2対8で敗れた。