なんと優勝、胴上げメンバーに……
お笑い芸人・杉浦双亮の挑戦記〈16〉
ひとつの声でチームが変わる。前期優勝を果たすなかで見つけた野球の面白さ
◆優勝へ加速、そして胴上げ
チームの雰囲気は一気に良くなっていた。
0.5ゲーム差で徳島インディゴソックスを追いかけていた僕たちにとって最後の天王山は5月25日。すごい試合になった。
相手の先発投手は、ジャイアンツが獲得を検討しているというガルシア。この時点の防御率は0点台で、接戦が予想されたのだけれど、僕たちは2回に早くも2点を先制する。けれどそのすぐ裏の3回に5点を返され、すでに乱打戦の様相を見せ始めた。4回僕たちが3点を取り同点。ここからはまさにシーソーゲームだ。6回に逆転するも7回に再逆転され、僕らがその裏に追いつく。そして9回。僕らはサヨナラで8対7の勝利を収めた。
7回に逆転された時点で二度のリードをひっくり返されたわけだけど、チームに焦りはなかった。ベンチからすごく声が出ていて、安心感があった。
劣勢なのに、優勢のような雰囲気を感じることがある――。
これもやっぱり野球の面白いところだったと思う。
この試合で首位を取り戻した僕たちは、5月28日、徳島インディゴソックスの敗戦で優勝を決めた。
みんなで球団事務所に集まり、吉報を待ったのだけど……そこはテレビ放送がほとんどない独立リーグ。この試合も例外ではなく僕らが待ち焦がれ、眺め続けたのは、テレビ画面ではなく、徳島の試合を現地で見ているスタッフと、電話でやり取りをするGMの姿だった(笑)。
優勝が決まった瞬間、みんなで喜びを分かち合い、胴上げが行われた。
弓岡敬二郎監督、加藤博人コーチ、荻原淳コーチ、トレーナーさん、鶴田キャプテン、ふたりの副キャプテンと続き、最後に僕が指名された。
「サブロク、お前も胴上げしてもらえ!」
監督のはからいだった。
喜び勇んで、輪の中央に向かい両手を挙げてスタンバイする。
みんなが一斉に、
「わーっしょい! わっしょい!」
と声をあげる。
宙に浮く僕……と思いきや、選手たちはただバンザイをするだけで誰も僕を持ち上げようとしなかった。ドテー!
アドリブでみんなが「ボケ」てくれたらしい(笑)。
こういう雰囲気が、愛媛マンダリンパイレーツの良さだと思った。
結局最後まで、僕は胴上げされなかったのはちょっと不服だけど(笑)。
40歳の挑戦はチームとしては素晴らしい前半戦で締めくくることができた。けれど、個人に目を向ければただただ物足りなかった。
次回はそんなことについて書いてみたいと思う。では、また来週!