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玄冬の門をくぐったら、あらゆる絆を断ち切る

元気に老いるための7つのすすめ【1/3】

1.「同居自立のすすめ」

《遊行期の人には、社会とつながっていないといけないという意識も、必要ないと思います。コミュニティに参加することが高齢の人たちにとって大事なことのように言われますが、コミュニティとは水のように淡々とした関係を保って、まわりに迷惑をかけないことが一番の社会に対する貢献だと思いますね。
 結局、これから先、イヤでも高齢者に対する風当たりが強くなってきます。このあいだ、軽井沢で若い人が大勢乗っていた深夜スキーバスがひっくり返った事故がありました。ドライバーが六十五歳だったので、高齢運転者に若者が犠牲になったと言う人たちがいて、それを言われたら、もう六十過ぎたら車の運転なんかできません。
 社会とのつながりを断って、生活の中で楽しみを見つけていくことが遊行期の人にとっての一つの小さな冒険だと思います。どんなに親切な家族でも、家族がいると自分の思うようには生活できないものです。みんなが食事を作っているのに、自分だけ別の食事を作るわけにもいかないでしょう。だいたい、現役の家族が七十、八十になった人と生活のリズムを一緒にしようというのが間違いではないのか。
 (……)
 そういうことを考えていると、やはり家族と一緒に住んでいることの心強さはあるけれども、一方でそこに不自由さがあるような気がします。ですから、一旦家族の絆から解放されて、独立して生活をやってみる必要があると思いますね。
 夫婦も、同じ一軒の家の中に住んでいても、ある年齢以降は別々に、勝手に生きるほうが本当はいいのではないでしょうか。ですから、共棲自立のすすめというか、一緒に住んでいるけれども、生活のリズムその他、何時に起きるかも、お互い勝手にやる。いつまでも手をつないで買い物に行くとか、そんなことしなくてもいいという人もかなりいるんじゃないでしょうか。ことに女性にはね。》

 

2.非相続のすすめ

《とりあえず、相続は考えないことです。いまの普通の、ある程度の大都市のサラリーマンは、自分の預貯金と、ローンを払い終えた家を一軒もっていると考えると、数千万円の資産のストックがあると言われています。そういう人たちが、子供への相続などを考えるからダメなので、九十までに全部使い尽くしてしまおうという計画を立てて、「九十過ぎたら、もう野垂れ死にでよい」という気にならないといけないと思うのです。
「子孫のために美田を残さず」に徹する必要がある。
 一般には、相続する資産をもっている人が家族に大事にされる傾向があります。おじいちゃんが亡くなったら、いろいろもらうものがあるからと家族は考える。でも、その人が「いや、相続はさせない。俺が生きているうちにあるものは全部使ってしまう」と宣言したら、どうなるか。「じゃあ、勝手にすれば」と言って離れていく家族もいると思いますね。おじいちゃんが、なぜ自分のもっているお金も使わないでいるかというと、家族に大事にされたいからなのではないか。
 いまの非常に現実的な戦いというのは、七十過ぎて、これまで自分がやったことのないような、外国へも行ってみたい、あれもしたいこれもしたいということで、大金をはたいて実行しようとすると、まわりの家族が必死にストップをかけることです。お金を使わせないためにです。》(続)

 

 

 

 

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