甲子園優勝校の監督が現職の小学校教諭とは!? 慶應高校の選手たちから見えてくる「主体的・対話的な深い学び」【西岡正樹】
◾️「甲子園優勝を人生最高の思い出にしないように」
昨今、「楽しい」や「エンジョイ」などの耳触りの良い、情緒的な言葉が学校やスポーツ界で度々聞かれるようになって久しいのですが、これらの言葉が独り歩きした結果、実体感のない幻想が生まれてしまったように私は感じています。与えられた環境の中で、ただ楽しんでいればいい、ただエンジョイしていればいい、というファニーな状態(張りぼての喜び)を繰り返しているにすぎません。そこには、何の学びも成長も生まれないのです。与えられた「楽しさ」ではなく、子どもたちが主体的な活動を繰り返す中で「楽しさ」を見つけた時、張りぼてではない実体感のある「喜び」が得られるのだと思います。
小学生と高校生という年齢の違いはありますが、どちらも主体的(意思を持って)に関わることで得られるものがあり、当事者の成長を促すということは同じなのです。そういう意味では、森林さんが実践していることは、小学生と高校生という違いはありますが、根本的に求めることは変わっていません。森林さんにとって甲子園は優勝という最高の結果に終わりましたが、選手たち(子どもたち)の学びはまだまだ続きます。これからどんな成長を見せていくのか、教師としての楽しみはまだ続きます。
優勝後、森林さんはその気持ちを次のような言葉で選手たちに伝えた、ということです。
「決勝で勝つ経験をさせてもらった。全部員に『ありがとう』と伝えたい。そして、甲子園優勝を人生最高の思い出にしないように。そこにしか、すがれないような人生にしてほしくない。もっと素晴らしい経験をしてほしい」
自分の未来は、自分の手の中にしかないのです。
文:西岡正樹