書道家・武田双雲氏がコミュニケーション力をあげる術を伝授!
『伝わる技術』(ベスト新書)刊行記念集中連載【第一回】
コミュニケーションもまったく同じ。
思いを「伝えたい」と考えているなら、どんな言葉をどのように表現すれば受け手に伝わるのか、形を整えて投げかけることが必要です。
「伝えたい」という言葉よりも、まず「伝わりやすい」言葉やタイミングを選んで、投げかけることが大事なのです。
では、コミュニケーションにおける伝わりやすい言葉、キャッチボールにおける「胸元」のような、受け止めやすい位置はどんなものになるのでしょうか?
実はこれが、キャッチボールとコミュニケーションの違いで、「人それぞれ〝胸元の位置〟が違う」ということです。
たとえば、僕の雅号は「双雲」といいますが、講演などでアラフォーの同世代の男性が多い場合はこんなふうに話します。
「はじめまして。武田双雲と申します。双(ふた)つの雲と書く名は自分でつけたのですが、まあ、実は『雲のジュウザ』が好きすぎて、つけたんですよ」
コレ、かつて『週刊少年ジャンプ』で連載していた『北斗の拳』の読者ならグッとつかまれる話なんですね。いま40歳前後の男性となると、だいたい『北斗の拳』に触れているため、「なんだあれか」と思ってもらえる。「書道家って割合、僕らと変わらないんだな」と感じてもらえる。そんなふうに感じてもらえると、心の距離感がグッと縮まって、そのあとに続く話を聞くための「耳」を開いた状態にしてもらえる、というわけです。
けれど、同じ自己紹介を、女子校の文化祭での講演で話しても「は?」とちんぷんかんぷんな顔をされるでしょう。60代、70代の経営者向け講座で話したら、怒られちゃうかもしれない。ようは「さっぱり意味が伝わらない」に違いありません。
伝えたいのに伝わらないのは、まさに相手の目線がすっぽり抜けたコミュニケーションをしたときに、生まれる状態なのではないでしょうか。
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