沖縄県糸満市「糸満ハーレー」
漁民の暮らしと信仰に基づく競漕
日本の祭りを撮る〜第9回
旧暦5月4日、沖縄の港町・糸満市では、海の恵みに感謝し、航海安全と豊漁を祈願した競漕が行われる。使われる舟は、12~13人乗りで長さ6.8m。450年~580年前、琉球国であった頃の南山王が中国で見た龍を描いた木の舟を走らせる爬龍船(はりゅうせん)の行事をこの地に伝えたという。
早朝に、糸満市の中央にある小高い丘「山巓毛」(サンティンモウ)でのウグヮン(拝み)から始まる。沖縄では祭りを司る役をノロ、ヌルと呼ぶ。南山王朝に仕えていた祭司の末裔・南山ヌル、糸満ヌル、及び各村の代表者らにより、海神への祈願を行うと、南山王朝から役目を継がれている子孫によりウグヮンバーレー(御願ハーレー)の開始の旗が振られる。
会場は糸満漁港。糸満市の9の自治会を西村、中村、新島の三つの村に分け、伝統の競漕が一日中行われる。朝一番のレース、ウグヮンバーレーは神事で出走した三つの村の選手は、白銀堂という拝所で、自分の村のハーレー歌を奉納する。
青年団ハーレー、職業別ハーレー、小・中学生ハーレーなど30近くのレースが行われる。一般は855mのコース。
午後2時を過ぎると、クライマックスとなる。まず見ものはクンヌカセー(転覆)だ。スタートして100mを過ぎる頃、舟を転覆させ、一回転させてまた乗り込む。いかに海水を舟に入れないで転覆させるかが技術だそうだ。
最終レースは伝統の西村、中村、新島の三村の屈強なメンバーによるアガイスーブという村の名誉をかけたレース。距離もぐーんと長くなり2150m。必死で戦う彼らへの観客の声援がすごい。
ハーレーが始まると梅雨があけるという沖縄。祭りの終わった日の夜は、遅くまでハーレー鐘の音が響いていた。
沖縄県糸満市「糸満ハーレー」 2015年6月19日 撮影/芳賀日向
競漕の撮影は、止めるか流すかを決める
左の写真は転覆する瞬間を1/500秒で止めた。右の写真は1/20秒で流したもの。どちらも動感が出た。シャッター速度優先とする。