元N響フォアシュピーラーが語る藝大生時代の「バイト」事情とは? 音大生は高収入?【齋藤真知亜】
国内最高峰の藝術学校で学ぶ喜びと憂鬱
■世間の3倍以上の高収入をゲット!
当時のギャラは、アマチュアオーケストラの場合、練習2回とゲネプロと本番で計1万5千円くらいでした。高くはありませんが、そのころはバイトは時給千円を超えればいい方でしたから、10時間程度の実働でこの金額は決して悪くありません。
何よりもオーケストラの現場を学べるのですから、こんなにありがたいことはありませんでした。
何人かで合奏団を編成し、各地で音楽教室をするような仕事もありました。当時は地方の学校や市民ホールなどで、音楽教室という名称のミニコンサートが盛んに催されていたのです。数日間の拘束になることもありますが、旅行気分を味わえてお金ももらえる楽しい仕事でした。
エキストラより手っ取り早くお金を稼ぎたいと思ったら、スタジオのバイトがありました。指定された時間にスタジオに行き、渡された譜面を見て、その場でレコーディングするのです。
譜面にはタイトルも歌詞も、もちろん歌い手の名前もありません。「いい曲だなあ」と思いながら弾いたら、あとで松田聖子の曲になっていてびっくりしたこともあります。このようなスタジオレコーディングの仕事の時給は4500円ほどだったでしょうか。2〜3時間で終わるので、1日に何本か掛け持ちしてその場でギャラをもらい、そのまま友だちと遊びに行くこともありました。
スタジオのアルバイトは、最初のころは大学の先輩に紹介してもらいました。プロの演奏家が集まるお店に出入りし、仲良くなって声をかけてもらうこともありました。
そのうちに「齋藤真知亜というやつがいる」という噂が広まると、レコード会社の人やスタジオミュージシャンから直接電話がかかってくるようになりました。アルバイトで弾く曲の多くはポピュラーミュージックでした。どれもパガニーニなどの曲に比べれば易しく思える曲ばかりでしたが、初見である程度弾くことはできても、2回目はもう本番です。それが世に残る作品になるということで、常にものすごいプレッシャーを感じていました。
(齋藤真知亜著『
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齋藤真知亜&齋藤律子のデュオ〝ニコイチヴァイオリン〟
デビューアルバムが絶賛発売中
「主よ、人の望みの喜びよ ニコイチヴァイオリン」
Jesus bleibet meine Freude nicoichiviolin
純正律の響きを重視して音作りを行うデュオ“ニコイチヴァイオリン”のデビュー・アルバム。弦楽器ならではの純正調による音の共和の美しさは勿論のこと、オリジナルが独奏の2つのシャコンヌは福旋律を交え、奥行きを増した響きの移ろいが興味深い。