「インボイス制度」反対署名54万3114筆 岸田首相へ手渡し実現。100万筆達成で中止へ追い込む【篁五郎】
◾️激変緩和措置で現場は大混乱
インボイスに賛成している人の中に「激変緩和措置があるから問題ない」という声がある。激変緩和措置とは、簡易課税業者になれば6年間は消費税の納税が2割で済むという制度(※3)だ。しかし、簡易課税では、いかなる場合でも預かり消費税額で納税額が計算されるため、消費税の納付義務が必ず起きる。そのため、例えば簡易課税制度の適用を受ける年度に設備投資などを行い経費負担が大きくなった場合、消費税の「払い損」になることが出てくる(※4)。しかも激変緩和措置は6年で終了するため措置後の税負担が大きくなる。
しかし現時点で激変緩和措置どころか、インボイスの中身自体も周知されていない。報道ステーションが9月23・24日に行った世論調査によると、29%の人が「わからない」と回答している。会見に参加した佐々木税理士によると「今、知った」という事業者もいれば、すでに「インボイス登録していない事業者とは取り引きしない」と内部規定を作っている会社もあるという。
岸田首相はインボイスについて「何年にもわたって対応を考え、説明を続けてきた」と話したが、STOPインボイスの記者会見と同日にインボイス閣僚会議の初会合を開催している時点で嘘なのは明白。制度がスタートする10月以降はさらなる混乱が起きるだろう。しかも混乱を収めるだけのマンパワーも足りていない。何せ財務省の職員が落語家もインボイスの対象となるのを知らなかったくらいだ。税理士や国税庁職員がすべてを把握しているとは思えない。
おまけに間違えた情報を流布する人も出ている。インボイスの目的を「税の捕捉率を上げて、脱税やマネーロンダリングを抑制して摘発すること」と述べ、メリットとして「脱税や犯罪資金を止めることで税収が増え、安全が確保されて納税者の利益になる」と断言した経済評論家がいた。これは明確な間違いである。インボイスの目的は「取引の正確な消費税額と消費税率を把握すること」であり、導入理由は消費税が複数税率になったからである。法人税や所得税などは対象外だ。仮にそういった目的があれば、別の制度でやればいいだけだと佐々木税理士も述べている。こうしたデタラメが横行している現状だと混乱するのは間違いないだろう。
※3 2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要(国税庁HP):https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm
※4 インボイス制度が簡易課税事業者に与える影響とは?必要な対策と注意点をわかりやすく解説:https://www.obc.co.jp/360/list/post276