「泣きたくなるほど駄目な日」の過ごし方。または何もアイディアが浮かばないときの私の対処法【神野藍】
神野藍「 私 を ほ ど く 」 〜 AV女優「渡辺まお」回顧録 〜連載第24回
【アイディアを見つけて拾い上げるために必要なこと】
今の生活で気がついたことがある。
それはずっと何かを考え、一つの形にするのは思いのほか体力がいるということだ。実際にパソコンの前で作業しているのは数時間だが、エッセイのアイディアを探して構築していく時間はその何倍もかかる。そのアイディアを見つけて拾い上げるために必要となるのは、備わっている感性だとかテクニックなんかよりも、安定のとれた生活を続けられていることだと私は考えている。肉体的にも精神的にもゆとりがなければ、小さな何かを発見することも、何かを振り返って考えることもできないからだ。大抵何も浮かばなくて落ち込むときは、食なり睡眠なり自身を支える何かがおろそかになっている場合が多い。ここ数か月で分かったのだが、どうやら私は万能ではないので切羽詰まって作業することも、夜遅くまで書き続けることも向いていない。身体に淀みが生まれると、吐き出す言葉まで淀みが及んでしまうようだ。それを理解しているので、精神的なバランスをとることと同じぐらいに、肉体的なバランスも保たなければいけない。
そのために今いくつかルールを決めている。
朝日が昇るぐらいから原稿を書き始めること。
無理だと感じたら思い切って休むこと。
どんなに忙しくても最低限の睡眠時間を確保すること。
誰よりも自分自身を大切にすること。
今日も自分との約束を果たしながら生活をし、文字を紡いでいる。
私の内側から飛び出した言葉が誰かに届くと信じて。
(第25回へつづく)
文:神野藍
※毎週金曜日、午前8時に配信予定