子どもは学びの「達人」である。その子の才能を引き出すために親や教師が肝に銘じておくべきこと【西岡正樹】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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子どもは学びの「達人」である。その子の才能を引き出すために親や教師が肝に銘じておくべきこと【西岡正樹】

子どもの成長とは何か? 教育の真髄がここにある

西岡正樹氏が担任していたクラスの生徒たち

 

◾️子どもは時間をかけながら自分の力で成長を続けていく

 

 悟の手紙には、自分事で手前味噌ではあるが、子どもの自立した学びと教師との関わりが見えた。私は、公立小学校の教師として、また地域のサッカー少年クラブのコーチとして、40年以上子どもと関わってきたが、経験を重ねるごとに明確になってきたことがある。それは、「子どもは教えられて成長するのではない」ということだ。

 悟の手紙の中にも「自分の力だけではできません。人の力を借りることで、自分の中のすべての才能(力)を出すことができます」とあるが、この文章は、教師は学びのきっかけと方向性を示すだけで、その時に学んでいることは、子どもたち同士が関わり合いながら時間をかけて身に着けていくことの方が圧倒的に多い、ということを表している。

 悟は「西岡先生のおかげ」と書いているがけっして「西岡先生に教えてもらった」とは思っていない。何故なら、悟は、西岡先生の手を借りながらも、自分が1年間書き続けたことで、自分は文章がうまく書けるようになったと思っているからだ。また、悟はその過程の中で多くの仲間の文章に触れ、「こういう時はこういう風に書けばいいのか」といつも誰かの文章を見本にしながら書き続け、自分のものにしてきたという思いがあるのだ。さらに「1年間」という長い時間がなかったら、このような自分にならなかったと悟は自覚している。

 「子どもは時間をかけながら自分の力で成長を続けていく」ということが実感できる悟の手紙だった。

 

 また、私は悟の手紙の中に子どもの「万能感」を見出すことができる。その万能感は多くの大人が失っている感覚だが、大人は子どもの万能感に触れる度に、「自分はこれでいいのか」と己自身に問いかける。また、「あいつができるのだからおれもできる」「あの子ができることならわたしにできないはずはない」という万能感は、子ども同士が共有しているだけではなく、子どもたちの意欲となって言動に表れていることが、悟の手紙に表れている。

 子どもの持つ万能感が多くの子どもの言動を支えていると言っても過言ではないだろう。悟は「まねをすること」を3年生の子どもたちに求めているが、悟の言葉から感じられる力強さは、「まねをしたら必ずできるようになる」と、悟自身が疑いなく信じているからなのだ。

 子どもが「学びの達人」たる所以もそこにあるように思える。子どもは、いや人は、できない事や分からない事があるとそれをできるようになりたいと思うし、分かるようになりたいと思う本性がある。その「本性」と「万能感」が子どもの中にあるから、子どもは「学びの達人」でいられるのではないだろうか。

 子どもの成長と共に、子どもの万能感は失われていくが、他人(ひと)と繋がることで得る満足感や楽しさは消えることはないだろう。子どもの万能感が失われても、一人でできないことは他人(ひと)と繋がることでできるようになるという経験を積み重ねていくので、子どもは成長を止めることはない。悟の手紙は、あらためて「子どもは学びの達人」なのだということを思い起こさせてくれた。

 

<追伸 >
自分の書いた文を読んで、改めて思った。教師はもっともっと一人ひとりの子どもをちゃんと見て、子どもを決めつけないことを意識してほしいな、ということ。決めつけたところで、教師は子どもを見なくなるし、子どもも意欲をなくしてしまうからね。 

 

文:西岡正樹

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西岡正樹

にしおか まさき

小学校教師

1976年立教大学卒、1977年玉川大学通信教育過程修了。1977年より2001年3月まで24年間、茅ヶ崎市内の小学校に教諭として勤務。退職後、2001年から世界バイク旅を始める。現在まで、世界65カ国約16万km走破。また、2022年3月まで国内滞在時、臨時教員として茅ヶ崎市内公立小学校に勤務する。
「旅を終えるといつも感じることは、自分がいかに逞しくないか、ということ。そして、いかに日常が大切か、ということだ。旅は教師としての自分も成長させていることを、実践を通して感じている」。
著書に『世界は僕の教室』(ノベル倶楽部)がある。

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