「学びとは何か?」ドキュメンタリー映画『世界のはしっこ、ちいさな教室』を観て考えた 教育の本質と日本の子どもたち【西岡正樹】
◾️子どもの暴力行為件数は過去最多。不登校児も過去最多の30万件
では、日本の子どもたちはどうだろう。「伝統文化を守り、生活を築き、そして、自らの力で自分の道を選び進んで行ける力」なんて必要ないと言わんばかりの言動が目立つ。また、そのような子どもたちが置かれている現状に目をやると、日本は危機的な状況にある。基準が変われば数字は変わってくるので鵜呑みにはできないが、いじめの件数や子どもの暴力行為件数は、過去最多であり、不登校児の数も過去最多で30万件に迫っている。
また、目の前にいる子どもたちは、溢れる情報の中で思考を停止させ、複雑化した関係に大きなストレスを抱き、ただただその中で右往左往しているのだ。「いじめ」「暴力行為」そして「不登校」が複雑に絡み増大化する日本の子ども社会は、正しく大人社会をなぞっている。
現代日本の大人社会では、様々なハラスメントがお互いを押しつぶしている。また、人々は過酷な労働環境の中で働き、物価の高騰や円安に慄き、その反動か、人々のいら立ちは日常化している。
また、それに耐えきれなくなった人々は、強すぎる刺激から逃避し、家の中に閉じこもってしまう。間違いなく、日本社会は大きなストレスを抱え、その中で多くの人々は見えない息苦しさに過呼吸気味に生活しているのだ。
『世界のはしっこ、ちいさな教室』の舞台であるブルキナファソ(アフリカ)、バングラディシュ(アジア)、シベリア(ロシア)にある小さな学校も、それぞれに多くの課題を抱えている。また、子どもたちが過酷な教育環境に置かれていることは否定できない。『世界のはしっこ、ちいさな教室』で学ぶ子どもたちは、恵まれている環境とは程遠いが、けっしてストレスフルではない。
それは、素直に、貪欲に学んでいる子どもたちの姿に表れている。子どもたちは学びから逃避しようとしていない。自分には学びが必要だと分かっている。また、子どもたちのために全身全霊をかけて活動している教師の姿を目の前にして、子どもたちがそのような教師の姿に影響を受けないはずはない。教師は子どもにとって一番大きな影響を与える存在なのだ。
来年年明け、私は東南アジア4か国(ベトナム、カンボジア、タイ、ラオス)の学校を巡る旅をする。きっと多くの刺激を受けるだろう。そして、目の前の教師や子どもたちを通して見えてくる「日本の学校」をしっかりと目に焼き付けてこようと思う。
文:西岡正樹