大局観のないリーダーの特徴は〝読書量が足りない〟 本屋こそ日本の文化と精神の拠点(『本屋を守れ 読書とは国力』藤原正彦著)【緒形圭子】
「視点が変わる読書」第6回 本屋こそ日本の文化と精神の拠点〜『本屋を守れ 読書とは国力』藤原正彦著
◾️現在日本人の読解力が著しく衰えてしまった原因とは
日本を代表する数学者である藤原正彦さんは1943年、旧満州の新京で生まれた。父は作家の新田次郎(本名は藤原寛人)、母は作家の藤原てい。父親は中央気象台(現在の気象庁)の職員であり、家族で満州に赴任している時に正彦さんが生まれた。戦後日本に帰国し、’51年「サンデー毎日創刊30年記念百万円懸賞小説』に応募した「強力伝」が一等となり、作家活動に入った。母親は専業主婦だったが、満州からの凄まじい引き揚げ体験をまとめた『流れる星は生きている』がベストセラーとなり、作家となった。
正彦さんは幼少の頃から数学の才があり、東京大学理学部数学科に進み、同大学院の修士課程を卒業するとアメリカに渡った。ミシガン大学の研究員となり、その後コロラド大学では助教授として教鞭をとった。帰国後はお茶の水女子大学の教授となり、2009年に退任するまで数学教育に勤しんだ。現在は講演活動を行いながら、精力的に執筆活動を続けている。
言論人として活躍する藤原さんには大ベストセラーとなった『国家の品格』や『国家と教養』といった代表作があるが、今回『本屋を守れ』を取り上げたのは、この本には藤原さんの本への愛、本屋への愛とともに読書と本屋が日本人にとってどれほど大切であるかが分かりやすい言葉で率直に語られているからだ。
藤原さんはまず、読書が日本の国力であったことを言う。江戸末期の識字率は90%ともいわれ、その頃、江戸には800軒、京都には200軒の本屋があった。幕末に日本に来た外国人は多くの日本人が本屋で本を立ち読みする姿を見て震撼し、植民地にすることをあきらめ、不平等条約を押し付ける方針に変えた。さらに読書で培われた潜在的な力は維新後30年余りで日本を列強の仲間入りにさせ、その後日本人がノーベル賞を28もとる基になったというのだ。
現在日本人の読解力が著しく衰えてしまった原因を、藤原さんは身近に本屋がなくなったことにあるとみている。別に本屋がなくなっても、ネットで本が買えるからいいじゃないかと思うかもしれないが、そうではない。ネットでは自分が興味のある本しか買わない。大学生であれば専門書、社会人であれば仕事に関係する本ばかりを読むことになる。駅前に本屋があれば、学校や仕事の帰りに寄って、店内を見ているうちに、思わぬ本との出会いがあり、そうした本を読むことの積み重ねが読解力を高め、教養となっていくのである。
とはいえアマゾンは便利だ。注文すれば翌日には送料なしで本が届く。私も最近は本屋ではなくアマゾンで本を買うことが多くなった。フランスでは本屋を守るために、本をアマゾンプライムの対象からはずすことが法律で決められているというが、日本もそうした規制が必要だと思う。
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