北海道新幹線「はやぶさ」グランクラスに乗車
落ち着いた室内は、時間帯のせいだろうか、利用客がほとんどいなかったせいもあって、静寂そのものだった。同じ東京駅構内でも、雑踏する改札口付近や一般の待合室とは別世界である。無料の飲料とお菓子を口に運びながら、出発までの時間をゆったりと過ごした。室内には、東京駅の歴史的な写真やイラストも飾られ、落ち着いた中にも鉄道ファンなら嬉しくなる雰囲気だ。
ラウンジは改札口の外にあるので、一旦は駅の雑踏の中を列車まで向かうのが残念。暑い中を、しばしホームで待機し、ようやくグランクラスに乗車。発車までの時間が短いので、革張りのシートに体を沈めると同時くらいに、「はやぶさ」はホームを離れた。
シートは深くリクライニングすることができ、実に座り心地がよい。通路側のB席だったので、この状態では、車窓をそれほど楽しむことはできないけれど、新青森までは通いなれた道中なので、あまり気にならなかった。
仙台を過ぎてランチボックスを開ける。サンドウィッチのほか、チキンやフルーツが添えられていて、味は上々だ。飲みすぎると、そのあとの旅に差し支えそうなので、ティーに切り替えた。なお、ドリンクはアルコールを含めて飲み放題である。
食事が終わり、のんびり過ごしていると新青森到着。これからいよいよ北海道新幹線に乗り入れる。しばらくは高架で田園地帯を滑らかに走る。トンネルをいくつも抜けると、いよいよ青函トンネルだ。北海道新幹線試乗会のときは、新函館北斗と木古内を往復しただけだったので新幹線車両では初体験となる。というわけで、トイレに行くふりをして席を離れ、デッキの窓から突入の瞬間を確認した。
トンネル内は、速度制限がかかり、在来線特急よりやや速い程度だ。25分程で青函トンネルを抜けると、いよいよ北海道の大地が車窓に現れた。木古内を通過し、右手に一瞬だけ津軽海峡が見える。高い防音壁とトンネルに阻まれ、在来線のようには車窓が楽しめない。
長いトンネルを抜け、北海道の大地を時速200キロ以上で走る。右手遠くには函館山が見える。その手前の海がよく見えず、津軽海峡線とは異なる情景である。次第に列車は減速し、あっけなく新函館北斗駅到着。周囲にビルも何もないのは、ここが函館駅から快速列車で15分程離れた内陸にあるからだ。
帰路に普通車を利用したら、東京までずいぶん長く感じたけれど、その点グランクラスは快適だったので、あっという間に感じた。料金が高いだけのことはあり、疲れ方は雲泥の差だ。いつもいつも乗れる車両ではないけれど、いつか再び乗ってみたいものである。