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島田雅彦 独占インタビュー 第5回
都民の多くの感覚は、リベラル左翼系と基本合致します

小説家・島田雅彦が語るこのふざけた世相を生き抜くためのサバイバル・テクニック 第5回

合理的な生き方。そんなものは、すべて人工知能に任せておけ。 小説家・島田雅彦が語る文学、政治、サヨクとウヨク、酒、旅、恋愛……このふざけた世相を生き抜くためのサバイバル・テクニック 第5回

 

自民党にとって東京は、
伝統的にアウェイ

 参院選が終わって間もないが、政治の話題は、東京都知事選に移っている。もともと革新系が強い東京であったが、猪瀬を挟んで石原、舛添と自民党の政治家出身の都知事が就いた。
参院選の流れを汲むのか、揺り戻しとなるのか注目されるところだが。

――いよいよ今度は、東京都知事選挙が告示されて、今月の末には投開票が行われます。
 紆余曲折はありましたが、小池百合子、増田寛也、鳥越俊太郎氏、この3人が有力と言われています。今回の都知事選に関して、島田先生はどんな思いを持っていますか?

 島田  もともと東京はよそ者の集まり、よそ者の都で、地縁血縁のない人たちの寄り合いの場なのですね。また、高度成長期になってから登場した階級である学生と主婦の都なんです。
 その意味で自民党の支持基盤から外れている。自民党は野合の集団ですから地方で大きな影響力を持つボスがかき集めてくる票と大企業の組織票をベースとした政党なんです。ですから、自民党にとって東京は、伝統的にアウェイなんですね。
 都知事選もそういった東京都民の志向性が反映された形になって、革新都政というのがこれまでの流れとしてあったわけです。

――東京の中でも、杉並とか世田谷、あるいは国立なんていうところは、特にそういったイメージが強いですよね。

 島田  そうですね。美濃部都政(1967年‐79年)は革新の走りですけど、その間に財政が悪化してしまった。
 その後に保守系の都政が長く続き、さらにその次にポピュリズムの時代になる。青島幸男は革新系のポピュリズムで、石原慎太郎は極右系のポピュリズムの代表でした。そして若かりし頃、石原慎太郎は美濃部亮吉に破れてるんですね。心理的にはその復讐として、都知事になったんです。
 都民の多くの感覚は、リベラル左翼系と基本合致します。石原はその反動で出てきた。だから石原慎太郎が人気あるのは下町ですよね。

――今回の都知事選でいうと、石原慎太郎には小池百合子が近いんでしょうか。宇都宮健児は、前回かなり得票ありましたが、鳥越俊太郎氏の出馬を受けて不出馬となりました。嵐の桜井のお父さんとか、蓮舫は断ったのでしょうね。
 究極の後出しとなった鳥越氏ですが、そのインパクトはかなりあります。

島田  鳥越氏は、もう少し若かったらよかったのにと思います。東京オリンピックの時には八十歳ですからね。健康問題もあるし、任期いっぱい務められるか、疑問ですね。
 印象としては、前回の都知事選に出馬した細川氏とイメージが重なる。宇都宮氏を副知事候補にして戦う戦略もありかと思いました。
 過去二回の宇都宮氏の政策は明確で、その路線を踏襲することになるでしょうから。
 個人的には、上杉隆を応援したいですね。東京オリンピック問題に対して、極めて具体的な提言をしているので。

 突然の都知事選ということもあるのだろうが、ポピュリズムの流れは一層、強くなっている。そうしたなかでは、出馬候補に名が挙がった嵐の父親・桜井氏などは、実際、適性があったかも知れないのに、かえって出にくいという状況を世論が作ったのではないか? いずれにせよ、それぞれの候補者がどういった都政を掲げて立候補しているのか、この一週間余りのなかで見極めなければならないが、いまや東京都における争点とはどこにあるのか?
「領収書で私物を買わない人」ってレベルまで下げていいのか?<編集部> 

 

 

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島田 雅彦

しまだ まさひこ

1961年東京都生まれ、川崎育ち。東京外国語大学ロシア語学科在学中の83年『優しいサヨクのための嬉遊曲』が芥川賞候補となり、作家デビュー。84年『夢遊王国のための音楽』で野間文芸新人賞。92年『彼岸先生』で泉鏡花文学賞。2006年『退廃姉妹』で伊藤整文学賞、08年『カオスの娘』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。10年下半期より芥川賞選考委員を務める。現在、法政大学国際文化学部教授。



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  • 島田 雅彦
  • 2016.06.09