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古代ギリシャ人はどのぐらい裸好きだったのか?!

藤村シシン流古代ギリシャ展のミカタ

「西欧文明の源」―—といわれる古代ギリシャ。今、東京•上野で特別展「古代ギリシャ展」が開催されている。紀元前6800年からヘレニズム時代や古代ローマ征服下の紀元後300年までの約7000年にわたっており、ギリシャ国内から集められた名品395点が一堂に会する大規模な展覧会と話題を集めている。作家で古代ギリシャ神話文化研究家の藤村シシンさんに、東京•上野で開催中の特別展「古代ギリシャ展」の愉しみ方について話を訊いた。

——今回の特別展は、約7000年という長く、そして多様な古代ギリシャ文化を辿る展示です。かつてない規模のギリシャ展を、もっと楽しむ「シシンさん流鑑賞法」があれば教えてください。

のっぺらぼうでシンプルな女性像から、華麗な神話の女神まで

藤村シシン(以下、シシン) 例えば、「人間の肉体の表現法はどう変わっていったか」など、あるテーマを決めて観ていくと面白いかもしれません。
「スペドス型女性像」(紀元前2800年〜前2300年)は、鼻だけが描かれた顔(元々は目鼻は色彩で示されていた)、胸の下で組んだ腕、閉じて真っすぐに伸びた脚が特徴ですが、その造形はいたってシンプルです。それが、紀元前3200年〜前1100年頃のミノス時代のフレスコ画は、素朴ながらも人間らしい線で描かれています。さらに紀元前900年頃〜前480年の幾何学様式•アルカイック時代の「クーロス像」や「コレー像」になると、髪や服装、筋肉の表現はさらにリアルになって来ます。
そして、クラシック時代(紀元前480年〜前323年)の「アリストテレス像」、ヘレニズムとローマ時代(紀元前323年〜)の「アルテミス像」と、どんどん精緻に、かつ華麗な彫刻へと変わっていきます。同じ人間を表現した像が、年代と共にこうも変化していくのかと改めて驚かされます。

古代ギリシャ人って、とにかく「裸好き」

それから、「裸」に注目して観ていくのも楽しいと思います。
クラシック時代のギリシャ神話の神様を始め、「(彫刻の)リアリズムが凄い!」と良く言われますが、私自身は「リアルというよりも、理想主義だ!」と思っています。例えば出展作の「青年を表した奉納浮彫り」(紀元前420年頃)の小さな短いマントを背中に掛けた裸の若者のレリーフ。筋肉たくましい腹部、軽く曲げて後ろに引いた右足……。
現実的に考えてみると、裸でマントだけって、かなり不自然ですよね。たなびくマントは肩から、流れるように……、確かに素敵ですけど。どれだけ裸を描きたかったんだろう!(笑)。

ヘレニズムや古代ローマ時代の彫刻を見ると、実際の肉体をそのまま表現した

ニンフとサテュロスの群像(紀元前2世紀末期/デロス島/デロス考古学博物館/大理石/高/71.0cm)

というよりは、空想の中の、完璧な肉体をひたすら、追求したかったことを感じます。
でも、あくまでも理想です。腕の曲げ方とか、足の重心の掛け方とか、とっているポーズにも不自然なところが色々あります。美術館ではなかなか難しいかもしれませんが、彫刻と同じポーズをとってみるとわかります。そんな角度は無理! というところがある筈です。そういうところに、古代ギリシャ人が作った完璧な美しい彫刻の秘密があるのかもしれません。

今回の展覧会、ここまで長い歴史の様々な文明の美術品が一堂に集められ、歴史を追って観られる機会はめったにないと思います。あれも、これもと眼が移ってしまい、却って観たものの印象が曖昧になる……なんてことも起こりがちです。自分の興味関心と繋がるテーマを作って鑑賞していくと、展覧会が益々面白くなっていくのではないかと思います。

特別展『古代ギリシャ —時空を超えた旅—』
日時/9月19日(月•祝)まで 
休)月曜日
※8月15日、9月19日は開館。
時間/9:30〜17:00
※土日•祝は午後6時まで。
※金曜日および7月、8月の水曜日は午後8時まで。
※入館は閉館の30分前まで。
場所/東京国立博物館 平成館(東京都台東区上野公園13-9)
観覧料/一般1600円、大学生1200円、高校生900円(いずれも当日券)
※「長崎展」が10月14日(金)〜12月11日(日)
 「神戸展」が12月23日(金•祝)〜2017年4月2日(日)に開催予定。

藤村シシン

 

(プロフィール) 
作家•古代ギリシャ神話研究家。1984年生まれ。東京女子大学大学院博士前期課程修了、史学専攻。高校生の時に見たアニメ『聖闘士星矢』の影響でギリシャ神話にはまって以来、古代ギリシャに人生を捧げている。ギリシャ語に精通。また、「藤村一味」を結成し、文章、イラスト、漫画、研究、祭儀再現などあらゆる角度から古代ギリシャを本気で遊びながら追っている。

 

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