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太鼓のロマンへいざなう
聖なるお里帰り「那智の扇祭り」

日本の祭りを撮る〜第10回

 

熊野古道 大門坂

那智の滝

那智の滝は一段の長さが133mと日本では最長。太古に12神が御滝本に降りて来られた。その神様を祀るのが御滝本の飛瀧(ひろう)神社。317年に那智山の中腹に熊野那智大社が建立となり、12神は遷(うつ)られた。熊野那智大社例大祭「扇祭り」はこの12神が年に1度、御滝本にお里帰りする。扇で飾った12の柱に神様がお遷りになって渡御されることから、この柱を扇神輿と呼ぶ。その扇神輿と参道を清めるのが12本の大松明の炎。豊作を願い、神様のお里帰りを祝う盛大な火祭りとなる。

前晩に大和舞と那智田楽が奉納された。小学生による大和舞。
世界遺産に登録された那智田楽。豊作を願う田遊びが芸能へと発展した。手に持つ金色の「びんざさら」がジャッ、ジャッと小気味よい音を出す。悪霊を払う音といわれる。

14日午前中、本殿前では、大和舞、那智田楽、御田植式が奉納される。本殿前に並んだ扇神輿には降神の儀が行われ、神職、大松明と参道を降り御滝本へ向かう。

御滝本に着いた大松明。重さ50kgもあるという。扇神輿は参道途中で迎えを待つ。

 

氏子の「ザアザアホウ」の声が響き渡ると、午後1時50分、御滝本からは、一、二、三ノ使いが扇神輿を迎えに行き、使いが戻ると大松明に点火する。

 

大松明が御滝本の飛瀧神社の鳥居を炙るようにくぐり、参道を登り扇神輿を迎えに行く。大松明を持つのは田楽を舞った氏子12名。

クライマックスの炎の乱舞だ。扇神輿、参道を清める。今年は天気がよく、燃える炎に勢いがあった。

大松明は円を描くように参道を降りてくる。参道下では松明に触れると無病息災と人々が手を伸ばす。

 

御滝本に到着した扇神輿へのカラス帽をかぶる神職による扇褒め。扇神輿の神鏡を打つ古式秘儀だ。
扇神輿は御滝本に安置され神事が執り行われる。
鎌を持って田刈歌を歌いながら田をめぐる「田刈式」。

 

最後に大松明を担いだ白装束の氏子により滝に向かって那瀑舞が奉納され、祭りが終わる。

 

撮り方ワンポイント
炎と人物の露出は「覆い焼き」で。
扇祭りは、炎、大松明、背景が一体となった情景を描きたい。炎に露出を合わせれば人物や背景は暗くなり、人物に露出を合わせると炎が露出オーバーとなる。4回目となる今回は炎の階調を優先して撮影、Photoshopで炎をマスキングして人物、背景の露出を持ち上げた。昔のモノクロの紙焼きで言う「覆い焼き」だ。
オリジナル画像での炎のマスキング
炎以外を持ち上げた画像

和歌山県那智勝浦町「那智の扇祭り」 2016年7月14日 撮影/芳賀日向

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