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あなたの思い描く「ゲイ」のイメージはどこまで正確なんだろう?

現在観測 第38回

◆誤解の種を意図的に量産するテレビマン

   無知による失言には寛容な僕だが、明確な悪意があったり、身勝手な理由で事実を歪曲させるようなノンケ(同性愛のケがない人間、の意)には容赦しない。いや、マスコミには多いのだ、そういう輩が。

   以前、某局のテレビディレクターから「会ってお話が聞きたい」と呼びだされたのだが、その相手がかなりの食わせ者だった。「新宿二丁目に関して、何か面白い話はないですかね?」と訊かれたので、僕は「特にないですね。ゆるやかに斜陽化してるだけです」と正直に答えた。すると相手は露骨にシラけた顔になり、その後の時間はかなりイヤ~なものとなったのであった。

   後日、そのディレクターの担当番組を観たら、「いま、ゲイの街・新宿二丁目で大変なことが起こっている!」と大仰なナレーションが流れてきた。「なんだなんだ!?」と画面に見入ったら、そこでは別の意味で大変なことが起こっていた。

「最近、ゲイの街・新宿二丁目から本物のゲイ、本気のゲイ、つまり『本ゲイ』が激減し、それに代わって『ぽっとゲイ』なる新人種が増えだした!」

   こんな文句で視聴者を煽りまくるナレーション。番組の言う「ぽっとゲイ」とは「二丁目にぽっと現われ、ぽっといなくなる新種のゲイ」だそうだが…あのなぁ、それは単なる「二丁目好きのノンケ客」のことではないの。

    最近の新宿二丁目はノンケ男女の集客に熱心で、「一般の方、女性、歓迎」と大々的に謳う店もかなり目立つ。だから、単に「ノンケ客が目立つようになった」と言えばいいだけの話なのだが、多分あのディレクターは「それだとインパクトに欠ける」と考えたんだろう。で、「ぽっとゲイ」なんてものを捏造したってわけ。

   テレビマンというのは語尾に「!」がつかないネタでは視聴率が取れないと思っており、ハデな要素が見当たらないなら捏造をもいとわない、というわけだ。

    昨年秋に日本テレビ系で放映された『偽装の夫婦』という連ドラも、かなり捏造色の強い作品だった。余命いくばくもない(と偽っている)母親に孝行したいゲイ男性が、学生時代に捨てたノンケ女性に「母さんの生きてる間だけ偽装結婚をしてくれ」と頼み込むところから始まるコメディなのだが、これがまたツッコミどころ満載なのだ。

    沢村一樹演ずるゲイ男性のキャラクターは「バラエティのオネエタレント」そのまんまで、しかも徹頭徹尾、自分と母親の関係しか考えていない。だから偽装結婚した相手のことを悪意なく振り回していく。「やめてくれぇ、ゲイはそこまで身勝手なエゴイストではないぞぉぉ」と身悶えた当事者は、決して僕だけではないはずだ。

   同じ局、同じ時間帯で1993年に『同窓会』(作/井沢満 出演/斉藤由貴・高嶋政宏・西村和彦)という同性愛をテーマに据えたドラマが放映されたのだが、リアリティという点ではあちらの方がはるかに上だった。20年以上も後に作られた作品の方がリアルさが欠如してるって、一体どういうことなんだ!?

◆捏造山積の時代だからシビアな目線の媒体を

イラスト/ソルボンヌK子

   視聴率や部数を伸ばすことが、商業メディアの重要課題であるのは百も承知している。
    だからといって、我々を数字稼ぎのネタとして「利用」していいわけではない。前述のテレビディレクターのような、自分たちがあらかじめ描いておいた「都合のいいゲイ像」に当事者をあてはめようとする制作者なんてのは論外もいいトコである。   

   昨今のテレビ界ではしばしばヤラセが発覚して大問題になるが、ことゲイ関連となるとヤラセ天国の状態である。
   「市井で穏やかに暮らすゲイの多数派が表に出たがらない、声をあげたがらない」というのが最大の理由だろう。
    極端に偏向したゲイ像をたれ流されてイラッとしてるのは僕と同様ながら、日々の平穏を捨ててまで抗議する気にはならない、という感じだと思う。

    それもそれでひとつの生き方だから、尊重したいと思う。ただ、僕の場合は「ムカついた時にはイヤミのひとつもキッチリ言っとく」という性分のうえ、『薔薇族』という歴史ある媒体も引き継いでしまったので、悪質ノンケの暴挙を許しとくわけにはいかないのだ。

「誰の味方でも、誰の敵でもない。誰とでも仲良くできるし、誰とでもケンカできる」

    これが僕の基本スタンスである。ゲイ側にもノンケ側にも、しがらみというものを持たないので、どんな相手に対しても常にフリーな立場で接することができるのだ。そんな奴の出している『薔薇族』だから、ゲイがらみの「おかしいと感じた事柄」を毎号、遠慮会釈なしに「おかしい」と書くようにしている。

    かつて「趣味」と言われた同性愛が「性的指向」と呼ばれるようになり、自民党までが性的マイノリティへの理解を進めるための法案なんてのまとめだした昨今である。流れに乗って我々を食いものにしようと、うまいこと言いながらすり寄ってくる輩も多い。だからこそ、真贋を見極めるための材料を提供する媒体と、それを発行しつづける人間が絶対に必要なのである(と思う)。

 いや、決して堅苦しいものじゃありませんので、気が向いたときにでも「薔薇族 竜超」とワード検索してみてください。あなたが今まで知らなかった事実に出会えるかもしれませんよ!?

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竜 超

りゅう すすむ

1964年、静岡県生まれ。2011年7月、日本初のゲイ商業誌(現在はインディーズマガジン)『薔薇族』の二代目編集長に就任。「性」「生」「政」の3大テーマに取り組む通俗作家。著書に『消える「新宿二丁目」』『虹色の貧困』(共に彩流社)、『オトコに恋するオトコたち』『町中華とはなんだ』(共に立東舎)がある。



 


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