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錦織圭が迎える3度目の五輪
見えてきた頂、最後の「壁」を突破できるか

リオ五輪展望【男子テニス】

立ちふさがる「最後の壁」を突破できるか

 リオ大会に世界ランキング6位で挑む錦織は、フェデラーとワウリンカの欠場により第4シードの地位を与えられる。これはシード勢が順当に勝ち上がれば、準決勝で上位2選手と当たるということだ。錦織は現在、ジョコビッチとの対戦成績は9連敗中の2勝10敗、マリーには3連敗中の1勝6敗。過去の対戦成績だけを見れば、突破は決して容易ではない。だが今季の錦織は、3月のデビスカップでマリーとフルセットの死闘を演じ、5月のローマ・マスターズではジョコビッチ相手に最終セットのタイブレークにつれこむ大熱戦の末に敗れている。近づいてきた……という手応えと自信を十分に感じながらの戦いになるはずだ。

 最後に、テニス選手にとってオリンピックとは、どのような存在なのか。

 7月中旬に行われたオリンピック出場会見で、錦織は「オリンピックの場合は、自分のお金で行くのではない」、「国がサポートしてくれるので」、「僕だけのことじゃない」と、周囲の動きや支援への鋭敏な感受を幾度も口にした。そう……プロのテニス選手は日頃、テニス協会から多少の援助は受けつつも、基本は自分のお金で遠征先までの航空券を買い、滞在先を決め、宿泊費を支払い、そうして得た賞金で自分を高めるために優れたコーチを、経験豊富なトレーナーや腕利きのフィジオ(理学療法士)を、場合によってはメンタルコーチや栄養士をも雇う。そのような“個人事業主”であるテニス選手にとって、国とはいえ他人のお金で戦地へと向かうことは、否が応でも責任感や、ある種の違和感を植え付ける。

 「オリンピックというのを深く考え過ぎず、普段と同じようにプレー出来るか。良い結果を残したいという想いはあるが、(まずは)平常心で臨みたい」

 7月の会見で、錦織はそうも言った。

 日頃は全てのリスクや責任を自ら背負い、なおかつ周囲からの期待やプレッシャーをも感じつつ戦っている――そんな彼には、オリンピックは“ご褒美”くらいの気持ちで向かって欲しい。

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内田 暁

6年間の編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライター/編集者に。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等のスポーツの他、ファッションや映画、アニメなどの現地情報を日本の雑誌等に寄稿する。2008年に帰国してからはテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、サイエンス、漫画やビデオゲームなど幅広いジャンルで執筆活動中。 近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)がある。


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