「欲しいものは本当にそれなのか?」貪欲な自分へのシンプルな問いかけと選択について【神野藍】
神野藍「 私 を ほ ど く 」 〜 AV女優「渡辺まお」回顧録 〜連載第46回
【何かを選ぶことは何かを諦めること?】
手を出しすぎたもの、当初よりも広げすぎてしまったもの、本来の目的や掲げた目標からどこか遠ざかってしまっているものたち。私にとっては始めることは何よりも簡単である。それらを散らかしたままではなく全てを満足いく形で終わらせていくのは始めることよりも難しい。そして、始めたことの中から一つ一つ見つめ直し、思考し、選んでいくのは何よりも骨が折れる。パッと現れた人間が、「あなたはこれをやるべきです」なんて指示してくれれば楽ではあるが、それでは何の意味もなさない。これは自分で蹴りをつけていかなければいけない。
「欲しいものは本当にそれなのか?」
シンプルな問いかけであるはずなのに、頭の中にいるもう1人の自分が囁き、思考を泥沼へと引き込んでいく。きっとそれらは心の奥底に沈み込んだ不安や恐れが表面化しただけのまやかしに過ぎないが、それらによって体力を奪われそうになるのは事実でもある。
実は、今でも自分の選び取ったものが正しいかは分かっていない。ただ、選んだものが正しいものになるように引っ張っていくこと、それに加えて選ばなかった選択肢を「諦めた」と思わないようにするのはこれからの自分のやるべきことだ。そしてそれは一回きりなんかではなくて、きっとこれから新しい何かと出会うたびに同じことをしていかないといけない。
一度きりの人生だからこそ、時間が限られているからこそ、やりたいことを何でもやるのではなく、大事なものを一つ一つ自らの手で選ばないといけない。そして選ぶことというのは、何かを諦めることと同じ意味ではない。
(第47回へつづく)
文:神野藍
※毎週金曜日、午前8時に配信予定
- 1
- 2