「50歳を迎えても全速力で走れる」なぜデスマッチファイター・佐々木貴は戦い続けられるのか?【篁五郎】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「50歳を迎えても全速力で走れる」なぜデスマッチファイター・佐々木貴は戦い続けられるのか?【篁五郎】

◾️「社長が失敗しても率先して走り回る会社は成功する」

「社長って二種類いると思うんです。一つは『俺は社長だから』と椅子に座っているタイプ。もう一つが僕みたいに自分から走り回るタイプ。僕は興行の時もそうだし、営業も率先して動く人間です。動いていないと不安もあるのかな?

  でも以前、僕の出身である岩手で興行した時に、地元ですごく有名な会社の社長とお会いする機会があったんです。その時に『社長が社長室でふんぞり返ってる会社はすぐ潰れるぞ』と言われたんですよ。そして『社長が失敗しても率先して走り回る会社は成功する』とアドバイスされました。その言葉は今でも肝に銘じていますね」

 佐々木は広島で興行があれば、現地入りしてあちこちへ営業に回る。沖縄でも同じようにポスター掲示のお願いをしたり、チケットを売り歩いたりして誰よりも動き回っている。その佐々木の姿を見て所属選手はもちろん、フリーで参戦しているレスラーも影響を受けている。

 デスマッチ団体であるフリーダムズは、試合が終わるとリング上やリング周りに凶器で使ったガラス片、木くず、画びょう、折れた釘などが散らばっている。もちろん全部掃除をしてから撤収作業に入るのだが、その掃除をフリー選手が率先して手伝ってくれているという。

「別に僕が『掃除しないとリングに上げないからな』なんて言ったことはありません。彼らは所属じゃないから帰っていいんですよ。でも、率先して手伝ってくれるんです。ものすごくありがたいですし、嬉しいですよね」

  その思いが観客にも伝わったのが、昨年行われた横浜武道館大会だという。横浜武道館は公共施設のためガラスの破片が飛び散るようなデスマッチはNG。佐々木が頼み込んで、画びょうの使用は何とかOKが出たという。「デスマッチゴミもお客様のゴミも清掃の徹底をお願いします」と釘を刺されていた。

 しかし試合後の会場はほとんどゴミが残っておらず、試合で使った画びょうも全て回収。しかも貸出時間内に撤収作業が完了したそうだ。貸出主からも高評価を得たという。

「僕からリングの上のことに関して、こうしてくれとかああしてくれとか、これはやらないでとか、ほぼないんですよ。リング上では好き放題やらせています。でもリングを降りたら、社会人として会場に迷惑をかけてもいけないし、お客さんに迷惑をかけてもいけないと言っています。レスラーだからって言い訳しても周りの人は関係ありませんからね」

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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