「群衆に三輪車で突っ込んでいく少女とは」 ベトナムで私は考えた【西岡正樹】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「群衆に三輪車で突っ込んでいく少女とは」 ベトナムで私は考えた【西岡正樹】

 

トゥボン川とアンホイ島、そして私

 

 ホイアンの少女も、橋の向こうの目的地まで行きたい(帰りたいのかもしれない)という思いが強く、そんな「自分の意志」にしたがって行動したにすぎないのかもしれません。子どもが後先を考えずに行動することはよくあることです。このような「自分の行動」が自分の望む結果にならなくても、たとえ失敗に終わったとしても、それは子どもにとって大きな経験値(力)になります。この経験値の積み重ねによって子どもが成長していくのだとすれば、「意志をともなう行動」こそが、子どもを成長させるために必要な行為だと言わざるを得ません(私の経験値による)。

 

 子どもは社会の中で生きています。子どもはその時代の「社会の写し」です。子どもの成長は、子どもが生活する社会の人たちや出来事によって促されます。ホイアンの少女を見ていると、その姿と対極にある日本の子どもの姿が見えていました。子どもがチャレンジする場、冒険する場、失敗する場を奪っている日本の社会は、子どもの成長する場を奪っているのと同じでないではないでしょうか。今、私は思っています「我々は、『子どもの意志をともなう行動』をより求めるべきだ」と。

 

文:西岡正樹

 

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西岡正樹

にしおか まさき

小学校教師

1976年立教大学卒、1977年玉川大学通信教育過程修了。1977年より2001年3月まで24年間、茅ヶ崎市内の小学校に教諭として勤務。退職後、2001年から世界バイク旅を始める。現在まで、世界65カ国約16万km走破。また、2022年3月まで国内滞在時、臨時教員として茅ヶ崎市内公立小学校に勤務する。
「旅を終えるといつも感じることは、自分がいかに逞しくないか、ということ。そして、いかに日常が大切か、ということだ。旅は教師としての自分も成長させていることを、実践を通して感じている」。
著書に『世界は僕の教室』(ノベル倶楽部)がある。

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