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パソコンとともに生きてきた【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第20回

森博嗣 新連載エッセィ「日常のフローチャート Daily Flowchart」連載第20回

 

【植樹作業で肉体疲労の毎日】

 

 庭園鉄道の土木工事は、最近ではそれほど大掛かりなものはない。ほぼ、全線が整備され、あとは小さな補修を毎年する程度になった。ここ最近多いのは、奥様(あえて敬称)からの依頼で、樹を移植する作業。庭園内では、自然に生えた樹が育ち、けっこうな大きさに成長したものが多々ある。それらを、もっと適切な(人間が欲しい)場所へ移すことを、彼女が思いつくためだ。春のこの時期が、移植に適しているのである。

 だいたい高さ2m以下の樹で、周囲から根を掘り出し、新しい場所で穴を掘って埋める。今年は既に20本ほど移植した。一日で5本くらいが体力的な限界だ。後日躰が痛くなるけれど、まあ、運動不足なので、ちょうど良い。怪我をしないように気をつけている。

 先日、血液検査、レントゲン、心電図、尿検査などをした。したかったのではなく、させられた。しかし、どれも問題なく、数値もすべて正常の範囲内だった。ようするに、これは「健康」ということだろうか。自覚はないので、不思議に思っている。

 

庭園では葉が広がり、新緑のシーズンとなった。ほぼ全域が木陰となり、木漏れ日で苔の地面が輝く。ガゼボ(展望東屋)の近くに停車中のレールカー。ようやく少し暖かくなり、夏を感じさせる爽やかな気候。

 

文:森博嗣

 

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✴︎森博嗣 新刊『静かに生きて考える』発売忽ち重版!✴︎

 

 

森博嗣先生のBEST T!MES連載「静かに生きて考える」が書籍化され、2024年1月17日に発売決定。第1回〜第35回までの原稿(2022.4〜2023.9配信、現在非公開)に、新たに第36回〜第40回の非公開原稿が加わります。

 

 

 世の中はますます騒々しく、人々はいっそう浮き足立ってきた・・・そんなやかましい時代を、静かに生きるにはどうすればいいのか? 人生を幸せに生きるとはどういうことか?

 森博嗣先生が自身の日常を観察し、思索しつづけた極上のエッセィ。「書くこと・作ること・生きること」の本質を綴り、不可解な時代を見極める智恵を指南。他者と競わず戦わず、孤独と自由を楽しむヒントに溢れた書です。

 〈無駄だ、贅沢だ、というのなら、生きていること自体が無駄で贅沢な状況といえるだろう。人間は何故生きているのか、と問われれば、僕は「生きるのが趣味です」と答えるのが適切だと考えている。趣味は無駄で贅沢なものなのだから、辻褄が合っている。〉(第5回「五月が一番夏らしい季節」より)。

 

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森博嗣

もり ひろし

1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部建築学科で研究をするかたわら、1996年に『すべてがFになる』で第1回「メフィスト賞」を受賞し、衝撃の作家デビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか、「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、また『The cream of the notes』シリーズ(講談社文庫)、『小説家という職業』(集英社新書)、『科学的とはどういう意味か』(新潮新書)、『孤独の価値』(幻冬舎新書)、『道なき未知』(小社刊)などのエッセィを多数刊行している。

 

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