パソコンとともに生きてきた【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第20回
森博嗣 新連載エッセィ「日常のフローチャート Daily Flowchart」連載第20回
【植樹作業で肉体疲労の毎日】
庭園鉄道の土木工事は、最近ではそれほど大掛かりなものはない。ほぼ、全線が整備され、あとは小さな補修を毎年する程度になった。ここ最近多いのは、奥様(あえて敬称)からの依頼で、樹を移植する作業。庭園内では、自然に生えた樹が育ち、けっこうな大きさに成長したものが多々ある。それらを、もっと適切な(人間が欲しい)場所へ移すことを、彼女が思いつくためだ。春のこの時期が、移植に適しているのである。
だいたい高さ2m以下の樹で、周囲から根を掘り出し、新しい場所で穴を掘って埋める。今年は既に20本ほど移植した。一日で5本くらいが体力的な限界だ。後日躰が痛くなるけれど、まあ、運動不足なので、ちょうど良い。怪我をしないように気をつけている。
先日、血液検査、レントゲン、心電図、尿検査などをした。したかったのではなく、させられた。しかし、どれも問題なく、数値もすべて正常の範囲内だった。ようするに、これは「健康」ということだろうか。自覚はないので、不思議に思っている。
文:森博嗣
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世の中はますます騒々しく、人々はいっそう浮き足立ってきた・・・そんなやかましい時代を、静かに生きるにはどうすればいいのか? 人生を幸せに生きるとはどういうことか?
森博嗣先生が自身の日常を観察し、思索しつづけた極上のエッセィ。「書くこと・作ること・生きること」の本質を綴り、不可解な時代を見極める智恵を指南。他者と競わず戦わず、孤独と自由を楽しむヒントに溢れた書です。
〈無駄だ、贅沢だ、というのなら、生きていること自体が無駄で贅沢な状況といえるだろう。人間は何故生きているのか、と問われれば、僕は「生きるのが趣味です」と答えるのが適切だと考えている。趣味は無駄で贅沢なものなのだから、辻褄が合っている。〉(第5回「五月が一番夏らしい季節」より)。