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田原総一朗 「日本を戦争ができる国にしてはいけないと思っている。しかし、自国の安全保障を自前で考えざるしかない時代になっている」

田原総一朗さん30日毎日連載 Q23.平和憲法公布と自衛隊創設の矛盾について、教えて下さい? 【その2】

『変貌する自民党の正体』(ベスト新書)を上梓。常に第一線のジャーナリストとして活躍したきた田原総一朗氏に話を聞いた。

Q23.平和憲法公布と自衛隊創設の矛盾について、教えて下さい? 【その2】

 
 

 吉田首相に当てた書簡は、「軍出動後の日本国内の治安を確保するために7万5000人の警察予備隊の設置、海上保安庁の8000人増員などを認可する」となっていた。けれど、実はこれは命令。占領下の日本政府は従わざるを得なかったんです。

 理由は「米軍出動後の国内治安維持のため」となっていたけれど、何より日本政府も「警察予備隊」というのが、どのような性格の組織なのかがわからなかった。そう、日本側が要請したのではなく、GHQからの要請、指令だったから政府も戸惑った。

 当時の岡崎勝男官房長官がGHQに問い合わせると、「“認可”という表現を使ったのは、憲法同様にGHQが日本に対して押し付ける形を避けるため」だと言う。また、「警察予備隊」というのは、単なる警察官の増員ではなく、いずれは銃器や戦闘用の装備を揃える「軍隊の卵」だという説明だったそうです。

 こうして警察予備隊が誕生した。時に吉田首相は再軍備に反対ながらも「あくまでも、国内治安維持のための特別警察だ」という主張。再軍備とは関係ないということで押し通せば、国内にいた再軍備推進派との対立もかわせるし、アメリカ国内にあった、日本の朝鮮戦争への派兵を望む声を抑えられるという思いだったんです。

 警察予備隊を作ること自体、憲法に違反している。
 ここで矛盾が起きてしまったんです。設立後には、さらに「保安隊設置」を強く求めてきた。吉田は、やはり反対だったんだけど、それを渋ると講和条約の締結が危ぶまれるという思いから、しぶしぶ了承したんです。そして自衛隊へと、日本の再軍備化が進んでしまった。全て日本政府が望んだのではなく、アメリカ側からの要請だったのです。

 安全保障は全面的にアメリカに委ね、日本は経済復興に力を注ぐべしという一貫した考えだった吉田としては、忸怩たる思いだったと思う。しかしアメリカの要請に従わざるしかない吉田は、1953年11月の自衛隊創設の審議の国会審議の中で、「自衛隊は戦力ではない。つまり、戦力なき軍隊である」という、有名な珍答弁を行った。どう考えても、理論矛盾と言わざるをえないんです。

 僕は、日本を戦争ができる国にしてはいけないと思っている。しかし、自国の安全保障を自前で考えざるしかない時代になっている。だから吉田答弁から今まで、日陰者になっている自衛隊の存在と自衛権を有することを認める方向に動いていくべきだと思いますよ。

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明日の第二十四回の質問は「政治問題やAIだけでなく、他にどんな分野に興味を持っていますか?」です。

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田原 総一朗

たはら そういちろう

ジャーナリスト。1934年滋賀県生まれ。60年早稲田大学文学部卒業。同年岩波映画製作所入所。64年東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。著書に『日本の戦争』(小学館)、『塀の上を走れ 田原総一朗自伝』講談社)、『安倍政権への遺言 首相、これだけはいいたい 』(朝日新聞出版)など多数の著書がある。


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