小池百合子 カイロ大学「超法規的」卒業の闇「恩返しとしてエジプトに多額のカネを…」【浅川芳裕×郷原信郎】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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小池百合子 カイロ大学「超法規的」卒業の闇「恩返しとしてエジプトに多額のカネを…」【浅川芳裕×郷原信郎】

小池百合子

 

「エージェント」としての姿、多額のカネも…

 

郷原:過去の小池氏の動きからも、エジプト政府との強いつながりをうかがわせます。私は4年前に『女帝 小池百合子』の出版を受けて、FCCJ(外国特派員協会)で疑惑を追及する記者会見を予定していた。件の小島氏の手記によると、「卒業はした、と言うんだけども、なかなか解決しないのよ」と小池氏が憔悴した表情で相談をし、小島氏が「じゃあ大学に声明を出してもらえばいいじゃないか」とアドバイスしたのが66日。それが69日のFCCJ記者会見前に、「郷原、黒木()の外国記者会の会見が明日の午後4時から行われる、その前にすべて済ませます」というメールが送られ、会見にぶつける形で駐日エジプト大使館のフェイスブックにカイロ大学声明が掲載されたのです。

 わずか数日の間にこんなことができる。いかにエジプト政府にストレートに頼み事ができるルートを持っているか、その証左でしょう。

 

浅川:実際に大使館側、駐日エジプト大使との関係も密ですよ。長年「小池詣で」という慣習があって、大使が着任するとまず小池氏に挨拶に行くんです。これは現大使も経験しています。また、2022年に小池氏は都知事としてエジプト出張をしましたが、そのアレンジをしたのも大使館です。両者の交流は、逐一エジプト国家情報局のホームページに記録されていて、「小池氏はエジプトに個人的関心を持ち、全面的に両国関係の発展を支援してくれる人物だ」「(エジプト出張で)小池氏は大統領に会い、同じ会議に参加する栄誉を得た」なんてことが書いてある。そういった記述を読んでも、小池氏はエジプト国家の子飼い、いわば「エージェント」的に扱われているのだなと思わされます。

 

郷原:こういう関係性を踏まえると、小池氏の学歴が「詐称」なのではと追及していくのは難しいように見えます。エジプト側も、政治的な意図が絡んだ卒業について、否定的なことはなかなか言えないでしょう。

 

浅川:そうとも言い切れません。仮に小池氏の権力が失墜して用無しなるようなことがあれば、一気にちゃぶ台返しが起こるかもしれません。我々こそ小池百合子さんに騙されていたんだと。結局エジプトも打算的に動いているだけなんです。極端な話、岸田首相が、「本当のことを言わないと援助を止めるぞ」と(エジプト政府に)電話して政治的圧力をかければ一発でひっくり返るでしょうね。都知事と首相、どっちが権力が上か、どっちからもっと金を引っ張れるかということで考えれば、当然岸田さんの言う事を聞くでしょう。

 

郷原:具体的にエジプト側としては小池氏と結ぶことで、どんなメリットがあるのでしょうか?

 

浅川:一つはカイロ大学の広告塔としての利用価値です。大学の著名な卒業生には、PLOのアラファト議長やイラクの大統領サダム・フセインなどがいますが、先進国の政治的指導者というのは小池氏だけなんです。「カイロ大学が日本の指導者を育てたんだ」とアピールできます。

 実際、新設のカイロ大学国際キャンパスの公式フェイスブックに小池氏のこんなPR画像が載っています。「カイロ大学はアラブの科学者や天才たちを多く輩出してきたように、日本の元防衛大臣である小池都知事の輩出に成功」というメッセージを添えて。

 小池氏はカイロ大学の偉大さを証明し、国際的に宣伝するための極めて貴重な存在ということがみてとれます。

 

 

郷原:経済的なメリットはどうでしょう?

 

浅川:小池氏の口利きで、カイロ大学やエジプトが得られるメリットは絶大です。

 たとえば、カイロ大学には2017年に日本研究センターというものができましたが、その前段に小池氏の口利きがあって、学長が大学評議会に進言し、設立したもの。大学の公式ホームページにもそう書かれています。

 日本研究センターの開設記念シンポジムに私も出席しましたが、冒頭でセンター長は小池氏に深く謝意を述べた後、彼女の祝辞メッセージ動画が映し出されました。

 また、エジプトの一部の学校では日本式の教育を「特活」という名前で導入しているんです。エジプトでは一切教わらない躾や倫理のところを日本式で教えるという。これにODA200億円ぐらい予算がついています(正式名称:「エジプト・日本学校支援プログラム(エジプト・日本教育パートナーシップ)」予算額1862,600万円)。

 この口利き役も小池氏です。エジプト大統領との会談時、この案件について直にお礼を言われています。2022年にエジプト外遊した際、都政とまったく関係ないその日本式学校を訪問し、エジプト政府をあげた大歓迎を受けているぐらいです。

 さらに在日エジプト人留学生向けにもあと100億円ぐらい予算がついている(同「人材育成計画(エジプト・日本教育パートナーシップ)」予算額1019,200万円)。政府系アハラーム紙にも「小池氏はエジプトの学生に大規模な奨学金を与える提唱者である」とはっきり記されている。留学生一人当たり400万円支給する大盤振る舞いです。 

 新規案件では、カイロ大学長に対して、様々な分野での協力の見通しを高めるためと「共同協力議定書」の作成を提案し、合意しています。エジプトの公式文書で協力といえば、先進国側からエジプト側への資金援助とほぼイクオールです。

 また、協力の背景として、カイロ大学留学時にお世話になったから、といったこと小池氏はあからさまに発言している。都知事として、完全に越権・背任行為といえるでしょう。

 小池氏はこんな感じでカイロ大学学長から大統領まで貸し借りの関係でつながっていて、感謝を送り合っている。そこには日本や東京からの資金提供があってこそのディープな利害関係があるわけです。

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浅川芳裕著『カイロ大学 〜〝闘争と平和〟の混沌』

\待望の大重版//

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〝闘争〟と〝混乱〟が生み出す世界最強のカイロ大学

 筆者がカイロ大学のオリエンテーションを受けたとき、担当者からいわれた最初の言葉は「混乱の世界へようこそ!」です。実際、カイロ大学のキャンパスで実体験した混乱の根は想像以上に深いものでした。そんな混乱を経験済みのカイロ大学出身者の共通点は、乱世に強いことです。カイロ大学は世界に混乱をもたらす人物と平和を求める出身者が混在しているのが特徴です。どちらの側につくにしても、両者の間では死ぬか生きるかの思想闘争が繰り返されています。混乱と闘争という学風を持つカイロ大学が彼らの人生に、学びの園という領域を越えた影響を与えているというのが本書の主題です。

 

ようこそ〝闘争〟と〝混乱〟の世界へ

〝エジプトの東大〟その思想と実学とは

 

◉世界最強の大学といわれる理由

◉カイロ大卒の世界のエリート知識人たち

◉多くの日本人が学んだ学部とは

◉交渉術は必須科目

◉単位取得・運転免許も交渉次第

◉カイロ大学とカイロ・アメリカン大学の違い

◉カイロ大留学のメリットとは etc.

 

浅川芳裕(あさかわ・よしひろ)

1974年、山口県生まれ。ジャーナリスト。エジプトの私立カイロアメ リカン大学中東研究学部(1992 〜1993年)、国立カイロ大学文学部東洋言語学科(セム語専科ヘブライ語専攻)中退。アラブ諸国 との版権ビジネス、ソニー中東市場 専門官(ドバイ、モロッコなど)、『農業経営者』副編集長などを経て、『農業ビジネス』編集長。著書はベ ストセラー『日本は世界5位の農 業大国』(講談社+α新書)、『ドナルド・トランプ 黒の説得術』(東京 堂出版)ほか多数。訳書に『国家を喰らう官僚たち ─アメリカを乗っ取る新支配階級─』(新潮社)。中東・イスラム関連記事では『「イスラム国」指導者の歴史観』『なぜ増える? イスラム教への改宗』(いずれも『文藝春秋スペシャル』)など がある。弊社刊『カイロ大学   〝闘争と平和〟の混沌』(ベスト新書)がロングセラーに。

 

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あさかわ よしひろ ごうはら のぶお

◉浅川芳裕(あさかわ・よしひろ)

1974年、山口県生まれ。ジャーナリスト。エジプトの私立カイロアメリカン大学中東研究学部(1992〜1993年)、国立カイロ大学文学部東洋言語学科(セム語専科ヘブライ語専攻)中退。アラブ諸国との版権ビジネス、ソニー中東市場専門官(ドバイ、モロッコなど)、『農業経営者』副編集長などを経て、『農業ビジネス』編集長。著書はベ ストセラー『日本は世界5位の農業大国』(講談社新書)、『ドナルド・トランプ 黒の説得術』(東京堂出版)ほか多数。訳書に『国家を喰らう官僚たちアメリカを乗っ取る新支配階級』(新潮社)。中東・イスラム関連記事では『「イスラム国」指導者の歴史観』『なぜ増える? イスラム教への改宗』(いずれも『文藝春秋スペシャル』)など がある。弊社刊『カイロ大学   〝闘争と平和〟の混沌』(ベスト新書)がロングセラーに。

  

◉郷原信郎(ごうはら・のぶお)

1955年生まれ。弁護士(郷原総合コンプライアンス法律事務所代表)。東京大学理学部卒業後、民間会社を経て、1983年検事任官。東京地検、長崎地検次席検事、法務総合研究所総括研究官等を経て、2006年退官。「法令遵守」からの脱却、「社会的要請への適応」としてのコンプライアンスの視点から、様々な分野の問題に斬り込む。名城大学教授・コンプライアンス研究センター長、総務省顧問・コンプライアンス室長、関西大学特任教授、横浜市コンプライアンス顧問などを歴任。著書に『「法令遵守」が日本を滅ぼす』(新潮新書)、『検察の正義』(ちくま新書)、『検察が危ない』(ベスト新書)、『“歪んだ法”に壊される日本 事件・事故の裏側にある「闇」』(KADOKAWA)、『「単純化」という病 安倍政治が日本に残したもの』(朝日新書)など著書多数。

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  • 浅川 芳裕
  • 2017.12.09