小池百合子 カイロ大学「超法規的」卒業の闇「恩返しとしてエジプトに多額のカネを…」【浅川芳裕×郷原信郎】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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小池百合子 カイロ大学「超法規的」卒業の闇「恩返しとしてエジプトに多額のカネを…」【浅川芳裕×郷原信郎】

小池百合子

 

言論封殺に屈した情けない日本メディア

 

浅川:カイロ大学が2016年に出した声明について、あらためて内容を確認したいと思います。声明には「遺憾なことに、一部の日本のジャーナリストが、カイロ大学が発行した同大学の卒業生に関する証明書の信憑性に疑義を呈している」とした上で、「本声明は、こうした一連の言動に対する警告である。我々は、このような行為を精査し、エジプトの法令に則って適切な対応を取ることを検討している」と記されています。これは、エジプトの国家権力から日本のジャーナリスト及びメディアに対する警告なんですね。

 

郷原:言論封殺をかけに来ている。これにどう対応すべきでしょう?

 

浅川:日本の言論人やメディアが連名できちっと抗議文を出すべきですよね。ただ、これまでそういう動きは見られていません。都議会自民党なんかは「小池氏のカイロ大卒業の証明を求める決議案」を出す予定だったのに、声明が出た途端、シュンとしてしまいましたよね。川村都議なんかは「声明直後に決議を出せば、僕らはエジプトと闘うことになる」「間違ったメッセージのようにとらえられかねず、冷静に判断した」と完全にビビッていた。

 私なんかは「とうとう正体を表したな」と嬉しかったのですが(笑)。

 今からでも声をあげるのは遅くありません。まず日本のメディア、ジャーナリストが4年前のカイロ大学声明にノーと言う。そしてエジプトにも自由を求めて戦っている知識人、ジャーナリスト、法律家の方が相当います。彼らと次に共同声明を出すことができれば国際問題として、BBCなどのメディアにも取り上げられるような流れになってくるのではないでしょうか。

 

郷原:この問題を深く追及するジャーナリストが、エジプト側からなにかされてしまう危険はありますか? 彼らにとって声明にある「警告」はどういう意味を持ってくるのでしょうか?

 

浅川:国家不敬罪のような形で裁かれてしまう可能性があります。カイロ大学というエジプトで最も偉大な大学であり、大統領令によってできた国家機関を侮辱する行為は極刑に処する、と。私の場合は、危害こそ加えられていませんが、エジプト軍事諜報部から日本人の愛人経由で脅しを受けたことがあります。一度エジプトでの取材で捕まったことがあるのですが、その時には「日本に帰ってからも追いかけるぞ」と。

 ここからさらに権力に肉薄していけば、具体的に危害を加えられる可能性もあります。例えば、以前カイロ大学学長の腐敗をフェイスブックで告発した学内の人物は逮捕され、手枷を縛られた写真を政府系メディアに掲載されてしまいました。さらに懲役1年となり、生々しい拷問も…。エジプトは「拷問博物館」があるぐらい、長い拷問の歴史がある国で恐ろしいですよね。

 

郷原:カイロ大学声明には「我々は(メディアの)かかる言動を精査し」と書いてありますが、精査の結果いかんで(拷問までの)フルコースが待っているということですね。『女帝 小池百合子』の著者である石井妙子さん、発行元の文藝春秋の編集長、疑惑を追及し続けてきた黒木さんや私なんかが、カイロ大学近くを歩いていたら何が起きるか

 

浅川:日本のメディア、ジャーナリストは正面から戦うべきですよ。これまで、日本で小池氏の疑惑に触れた出版物や記事は膨大な数があると思いますが、これをもう全部アラビア語に訳して向こう側に送りつけてしまうのです。正面から反論の声明を出して、「精査しろ、戦おうじゃないか」と。さらにエジプトで戦っている外国人、例えばクウェートやイギリスの活動家とも協力できるかもしれません。エジプトの大学の偽造文書問題などは国際問題になっているので、日本が主体的に国際的なムーブメントを起こすこともできるはずです。

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浅川芳裕著『カイロ大学 〜〝闘争と平和〟の混沌』

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〝闘争〟と〝混乱〟が生み出す世界最強のカイロ大学

 筆者がカイロ大学のオリエンテーションを受けたとき、担当者からいわれた最初の言葉は「混乱の世界へようこそ!」です。実際、カイロ大学のキャンパスで実体験した混乱の根は想像以上に深いものでした。そんな混乱を経験済みのカイロ大学出身者の共通点は、乱世に強いことです。カイロ大学は世界に混乱をもたらす人物と平和を求める出身者が混在しているのが特徴です。どちらの側につくにしても、両者の間では死ぬか生きるかの思想闘争が繰り返されています。混乱と闘争という学風を持つカイロ大学が彼らの人生に、学びの園という領域を越えた影響を与えているというのが本書の主題です。

 

ようこそ〝闘争〟と〝混乱〟の世界へ

〝エジプトの東大〟その思想と実学とは

 

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◉単位取得・運転免許も交渉次第

◉カイロ大学とカイロ・アメリカン大学の違い

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浅川芳裕(あさかわ・よしひろ)

1974年、山口県生まれ。ジャーナリスト。エジプトの私立カイロアメ リカン大学中東研究学部(1992 〜1993年)、国立カイロ大学文学部東洋言語学科(セム語専科ヘブライ語専攻)中退。アラブ諸国 との版権ビジネス、ソニー中東市場 専門官(ドバイ、モロッコなど)、『農業経営者』副編集長などを経て、『農業ビジネス』編集長。著書はベ ストセラー『日本は世界5位の農 業大国』(講談社+α新書)、『ドナルド・トランプ 黒の説得術』(東京 堂出版)ほか多数。訳書に『国家を喰らう官僚たち ─アメリカを乗っ取る新支配階級─』(新潮社)。中東・イスラム関連記事では『「イスラム国」指導者の歴史観』『なぜ増える? イスラム教への改宗』(いずれも『文藝春秋スペシャル』)など がある。弊社刊『カイロ大学   〝闘争と平和〟の混沌』(ベスト新書)がロングセラーに。

 

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あさかわ よしひろ ごうはら のぶお

◉浅川芳裕(あさかわ・よしひろ)

1974年、山口県生まれ。ジャーナリスト。エジプトの私立カイロアメリカン大学中東研究学部(1992〜1993年)、国立カイロ大学文学部東洋言語学科(セム語専科ヘブライ語専攻)中退。アラブ諸国との版権ビジネス、ソニー中東市場専門官(ドバイ、モロッコなど)、『農業経営者』副編集長などを経て、『農業ビジネス』編集長。著書はベ ストセラー『日本は世界5位の農業大国』(講談社新書)、『ドナルド・トランプ 黒の説得術』(東京堂出版)ほか多数。訳書に『国家を喰らう官僚たちアメリカを乗っ取る新支配階級』(新潮社)。中東・イスラム関連記事では『「イスラム国」指導者の歴史観』『なぜ増える? イスラム教への改宗』(いずれも『文藝春秋スペシャル』)など がある。弊社刊『カイロ大学   〝闘争と平和〟の混沌』(ベスト新書)がロングセラーに。

  

◉郷原信郎(ごうはら・のぶお)

1955年生まれ。弁護士(郷原総合コンプライアンス法律事務所代表)。東京大学理学部卒業後、民間会社を経て、1983年検事任官。東京地検、長崎地検次席検事、法務総合研究所総括研究官等を経て、2006年退官。「法令遵守」からの脱却、「社会的要請への適応」としてのコンプライアンスの視点から、様々な分野の問題に斬り込む。名城大学教授・コンプライアンス研究センター長、総務省顧問・コンプライアンス室長、関西大学特任教授、横浜市コンプライアンス顧問などを歴任。著書に『「法令遵守」が日本を滅ぼす』(新潮新書)、『検察の正義』(ちくま新書)、『検察が危ない』(ベスト新書)、『“歪んだ法”に壊される日本 事件・事故の裏側にある「闇」』(KADOKAWA)、『「単純化」という病 安倍政治が日本に残したもの』(朝日新書)など著書多数。

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  • 浅川 芳裕
  • 2017.12.09