「別学を守れ!」多様性の時代こそ、男女七歳にして席を同じゅうせず、で行こう【宝泉薫】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「別学を守れ!」多様性の時代こそ、男女七歳にして席を同じゅうせず、で行こう【宝泉薫】

 

 また、筆者にとってこの件はフェミの恐ろしさを知り、フェミニズムこそ文化の敵だと考えるようになったきっかけだ。芸能とフェミの歴史を見ても、大きな転回点。じつはこの4年前、当時の流行語でもあった「ウーマンリブ」をめぐり、男女が楽しくやり合う青春ドラマがヒットしていた。サンミュージックの若手俳優・森田健作が主演した「おれは男だ!」(日本テレビ系)である。

 作品の舞台は、女子校から共学化したばかりの名門私立高校。女子の力が強く、転校してきた主人公の入ったクラスにも帰国子女の女子リーダーがいた。主人公は剣道部を作るなどして、ウーマンリブ打倒を目指すものの、その過程で男女の相互理解が深まっていくという明るい内容だ。

 こうした構図は現在放送中のNHK朝ドラ「虎に翼」などにも通じるもの。ただ「虎に翼」には明るい楽しさが乏しく、時代の違いというか、フェミ台頭による悪影響も感じてしまう。令和の世で「おれは男だ!」のようなものを作ろうとしても、過激フェミに配慮したいびつなものになるのではないか。あるいは、埼玉の女子校が共学化したとして、主人公のような男子生徒が活躍できるとは考えにくい。

 ちなみに、森田はその後、政界に転じて千葉県知事にまで登りつめた。同じサンミュージックでも、佐藤とは明暗を分けたかたちだ。

 また「おれは男だ!」では、森田が歌った主題歌「さらば涙と言おう」もヒットした。作詞した阿久悠は森田について、

「あきらめるより仕方がない、と思っていた『日本の男の子』というイメージが、君によってよみがえってきた」

 と、評している。

 じつは今年2月「うたコン」(NHK総合)でこの曲がカバーされた。歌ったのはミュージカル俳優でもある石丸幹二で、バックを務めたのは秋元康プロデュースのアイドルグループ・僕が見たかった青空。石丸が男らしく歌唱する後ろで、セーラー服姿の僕青の女の子たちが「だるまさんがころんだ」をやったり「茶摘み(あるいは、アルプス一万尺)」の手遊びをやったりしながら可愛らしく踊る。

 その様子がかつてのスクールメイツのようで、それをSNSでつぶやいたら、筆者以上のアイドルマニアでもある長年の友人から「ズバリ同じことを感じていました(笑)」というリプがついた。

 そのとき改めて気づかされたのは、こうした爽やかで潔い美というのは、男らしさと女らしさの対比的体現からしか生まれないのでは、ということだ。たとえば、高校野球が根強い人気を保っているのも、グラウンドで泥にまみれる丸刈りの男子を、チアガールや女子マネが応援し支える構図が健在だからだろう。

 ただ、歌の世界では「さらば涙と言おう」みたいなものはすたれてしまった。唯一、平成でこれに近いのがシャ乱Qの「空を見なよ」だろうか。つんく♂作品の夜っぽくてけばけばしい雰囲気とは異なり、はたけの曲にまことが詞をつけた爽やかで潔いナンバー。プロ野球中継のテーマ曲として作られ、文字通り「空」を気分よく見上げたくなるような内容だ。

 そのなかに、こんな詞が出てくる。

 「勇気や根性ならば見かけよりあるんだ おまえは愛嬌と色気忘れるな」

 まさに、男らしさと女らしさの対比的体現をやっているわけで、やはり、爽やかで潔い美はそういうものと通じ合うのである。

 もっとも「見かけより」というフレーズが物語るように、まことは男っぽいキャラではない。また、シャ乱Qの活動休止後は仕事ぶりも地味で、女子アナ妻の富永美樹に食わせてもらっているのではと邪推したいような状況だ。

 が、それも構わない。定型的な男らしさや女らしさからの「ズレ」がある意味、その人の個性、すなわち自分らしさにもつながるからだ。男だけど甘党とか、女だけど格闘技好きとか。そのズレが最も大きいのが、中性的もしくは両性的な人たちだろう。

 芸能界にはそういうズレをあえて活かし、自分らしさとして貫くことで成功する人も少なくない。その生き方からは爽やかさはともかく、潔さは十分に感じられる。ただ、男らしさや女らしさの定義が曖昧化するにつれ、そんな人たちの存在感も曖昧化してしまうことに。それこそ、カルーセル麻紀やピーターみたいな突き抜けたオカマタレントが、マツコ・デラックスを最後に出てこなくなったのは、男は男らしく女は女らしくという美学が希薄化したことと関係しているはずだ。

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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