財務事務次官よりもはるかに正確に、国家財政や貨幣について理解できるようになる方法【中野剛志】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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財務事務次官よりもはるかに正確に、国家財政や貨幣について理解できるようになる方法【中野剛志】

『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』

 

 

◾️財政赤字を拡大しても良い条件と理由

 

 それは、平成時代に入って、バブル経済が崩壊し、さらに1990年代後半からはデフレ不況になったからです。

 不況下では、企業は投資に消極的になるので、企業部門が貯蓄超過にならざるを得ません。

 そして、民間部門の貯蓄が増大すれば、その裏返しで、政府部門の債務が膨らむのは、当然のことです。

 もし、政府債務を減らしたければ、民間部門を貯蓄超過から投資超過へと転じさせなければなりません。つまり、景気を良くするということです。そして、景気を良くするには、財政支出の拡大や減税が必要になる。

 しかし、もし、不況で、民間部門が貯蓄超過であるのに、政府債務を無理やり削減しようとして、歳出削減や増税を強行するとどうなるか。

 不況が深刻化して、さらに民間貯蓄が増え、その裏返しで政府債務はかえって膨らむでしょう。

 仮に、政府債務を減らせたとしても、それは、国民所得の減少を通じて民間貯蓄が減り、その裏返しで政府債務が減るという、恐ろしい結果となります。

 矢野氏は積極財政論を「夢物語」と断じていますが、民間貯蓄が超過している時に政府債務を減らしても問題ないと考える方が「夢物語」なのです。

 

 ちなみに、「財政出動をしても、経済は成長しない」と言い張る論者が後を絶ちませんが、面倒くさいので、議論を単純化して言うと、

 「国内総生産=民間消費+民間投資+政府支出+純輸出」

 ですから、よほど変な支出でもしない限り、政府支出を増やした分だけ、国内総生産が増えると考えるのが普通でしょう。

 

 というわけで、民間部門が貯蓄超過である間は、財政赤字であるのが当然だということになります。それどころか、企業部門が貯蓄超過から投資超過になるまで、政府支出をもっと増やし続けなければなりません。

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中野 剛志

なかの たけし

1971年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。96年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。01年に同大学院にて優等修士号、05年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる 奇跡の経済教室【戦略編】』(KKベストセラーズ)。  

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