残念ながら会社員のあなただってMC(マインドコントロール)されている! 本当の統一教会問題は、統一教会だけの問題ではない【仲正昌樹】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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残念ながら会社員のあなただってMC(マインドコントロール)されている! 本当の統一教会問題は、統一教会だけの問題ではない【仲正昌樹】

統一教会問題を、自分たちと関係のない話に矮小化しようとする人たち

統一教会の合同結婚式

 

◾️「統一教会はMCしている」と安易に言っている連中こそ危ない

 

 (旧)統一教会を批判する左派の人たちは、統一教会が信者をMC(マインド・コントロール)する特別な技術を持っている、あるいは、霊界とか先祖の因縁の話で簡単にMCされてしまう人間が信者になってしまうと思っているようだが、元信者である私にとっては、それはあまりに現実からかけ離れた単純化だ。

 私は、統一教会はある意味でMCをしていると思っているが、それは反統一の左派とかマスコミが言っているような単純なものではない。生活に密着してじわじわ効いてくるものであり、意識的にやっている部分と無自覚の内に習慣化している部分の区別がつきにくい。それは、統一教会だけの問題ではなく、いろんな団体やグループに見られる、かなり普遍的な現象だと思っている。どういうことか、ここでちゃんと説明しておきたい。

 かなり粗雑な反統一のサヨクは、「統一教会は、地獄に落ちるぞと脅してMCする」、という言い方をする。これは統一教会の信者になるような奴は、自分たちとは違う下等な生き物で、原始的な暗示にかかりやすいという思い込みによる傲慢な物言いだ。「言うことを聞かなかったら、地獄に落ちるぞ」と言われて、「怖い!信じます」と恐れ入る人間がいるだろうか。

 被害者ポジションの元信者の多くもこうした地獄トークに同調し、「そうだ、教団は地獄と言って脅かす」と言っているが、彼らは自分のことを棚に上げ、現役信者を下等動物扱いしている。「地獄に落ちるぞ」、と一喝されて怖れ入るような単純な人間がいるとすれば、そんな人間は、入れ替わり立ち替わりいろんな人物から始終MCされて振り回され、教団にいようといまいと、まともな人生を送ることはできないだろう。

 統一教会にMC技術があるとすれば、「地獄に落ちる!」と耳元でがんがん怒鳴りつけるのでも、秘儀として伝承される強力な催眠術のようなものでもない。(全員が大声で思い思いの言葉で祈祷する)祈祷会とか(責任者から教祖の深い御心を伝えられる)礼拝、布教や万物復帰(物売り)の実践、その前の決断式、日々の信者同士の会話等、日常生活の総体によって、気持ちがコントロールされるということだろう。

 宗教は生活に密着した儀礼・慣習によって、信者の心(感情の揺れ幅)をコントロールするものだ。そうした生活に浸透したMCは、会社、学校、市民運動、スポーツ・芸術の団体が、何らかの形で実行している。統一教会のような新興宗教で、集団生活を取り入れているようなところは、それを、信者の生活全体を包摂するような形でやっている。何をやっているか具体的に知ろうともせず、統一教会はMCしている(=下等な奴らはひっかかる)、と安易に言っている連中こそ危ない。

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✳︎重版御礼✳︎

哲学者・仲正昌樹著

『人はなぜ「自由」から逃走するのか』(KKベストセラーズ)

 

「右と左が合流した世論が生み出され、それ以外の意見を非人間的なものとして排除しよ うとする風潮が生まれ、異論が言えなくなることこそが、
全体主義の前兆だ、と思う」(同書「はじめに」より)
ナチス ヒットラー 全体主義

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仲正 昌樹

なかまさ まさき

1963年、広島県生まれ。東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了(学術博士)。現在、金沢大学法学類教授。専門は、法哲学、政治思想史、ドイツ文学。古典を最も分かりやすく読み解くことで定評がある。また、近年は『Pure Nation』(あごうさとし構成・演出)でドラマトゥルクを担当し、自ら役者を演じるなど、現代思想の芸術への応用の試みにも関わっている。最近の主な著書に、『現代哲学の最前線』『悪と全体主義——ハンナ・アーレントから考える』(NHK出版新書)、『ヘーゲルを超えるヘーゲル』『ハイデガー哲学入門——『存在と時間』を読む』(講談社現代新書)、『現代思想の名著30』(ちくま新書)、『マルクス入門講義』『ドゥルーズ+ガタリ〈アンチ・オイディプス〉入門講義』『ハンナ・アーレント「人間の条件」入門講義』(作品社)、『思想家ドラッカーを読む——リベラルと保守のあいだで』(NTT出版)ほか多数。

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