どうしても瘦せたい人必読!
不完全拒食マニュアルとは?
瘦せられる理由、瘦せられない理由がわかる!
摂食障害の女性たちとの30年余りの交流を通してわかった
「瘦せられる理由」と「瘦せられない理由」
『瘦せ姫 生きづらさの果てに』著者・エフ=宝泉薫氏が指南する
禁断の「不完全拒食マニュアル」とは何か?
今回まずは「制限型」と言われる不完全拒食マニュアルを解説する。
不完全拒食マニュアルその1 制限型
「私は切手をなめることさえしません。
切手の糊のカロリーについて知っている人はいないと思いますけど」
1990年代に大ヒットし、今なお読み継がれている『完全自殺マニュアル』(鶴見済)(註1)という本があります。自殺の方法を網羅して紹介し「その気になればいつでも死ねるという、安心感」(帯コピーより引用)を求める人たちから特に支持されました。
この章のタイトル「不完全拒食マニュアル」とは、それをもじらせてもらったもの。ただ、あちらが「完全」なのに対し、こちらは「不完全」としてあります。
その理由はというと——。
まず、自殺というものは成功した時点で終わりです。それゆえ、方法を網羅するという意味以外でも「完全」という言葉がハマる気がします。しかし、拒食の場合はそういうわけにはいきません。死ぬために拒食する、というケースはさておき、あくまで瘦せることが目的なら、その拒食に終わりはないからです。
しかも、瘦せ姫が理想とする、あるいは安心できる体型というのは、維持することがかなり難しかったりします。また、世間的にはよしとされなかったり、本人も苦痛にさいなまれたりして、本当の満足はなかなか得られません。到達するのも、維持するのも容易ではないことについてのマニュアルなのですから、ここはやはり「不完全」とするのがふさわしいと考えました。
したがって、今回ここで紹介される方法を参考にするにあたっては、細心の注意、あるいは青春や人生そのものを棒に振るかもしれないという覚悟が必要です。つまりはそれほど、危険なことだったりもします。格闘技でいう「寸止め」のような、ギリギリのところでとどめるという考え方もここでは必要でしょう。それでもなお、一定数いるであろう、病的でもいいから瘦せたい、瘦せすぎたいという人が、そのためのヒントを得たり、リスクを知るなどして、このマニュアルを活用してもらえたらと思うのです。
というわけで、まずは、制限型の拒食からいきましょう。
ダイエットと結びつけられやすい摂食障害ですが、それは別物だともいわれます。ストレスなどから瘦せ始めるケースも少なくないですし、もしダイエットが摂食障害の「きっかけ」となることはあっても「原因」ではないのだと。実際、友達同士で似た方法のダイエットを始めても、摂食障害になる人もいればならない人もいます。いわば、ダイエットをやりすぎてしまう「適性」の有無が関係しているわけです。
では、その適性とはどういうものなのでしょう。じつは瘦せ姫がよく使う言葉に「拒食脳」というものがあります。端的にいえば「食べなきゃ瘦せる。食べると太る。瘦せたいなら、食べてはいけない」という強迫観念のことです。ほとんどの人が食欲に負け、ダイエットに挫折するか、ほどほどのところで打ち切れるのに、瘦せ姫の場合、この拒食脳が大きく働いて食欲に勝つため、ダイエットをやりすぎてしまいます。
そういう意味で、この拒食脳さえしっかり機能すれば、どんな方法であっても、瘦せること、瘦せすぎることは可能です。たとえば、摂取カロリーを減らすとか、消費カロリーを増やすとか、太りやすい食材を断つとか、夜8時以降には食べないとか、ダイエットの基本とされる方法を病的なほど実行できるようになるからです。
その徹底ぶりときたら……。
以前、テレビ(註2)でBMI(註3)17くらいの瘦せ体型を維持するために標準摂取量の約半分でしかない、一日1000キロカロリー前後の食生活を続けている女性が取材を受けていました。が、それくらいならむしろ健康的に思えるほど、本格的な瘦せ姫のダイエットは徹底しています。それに比べると一日1000キロカロリーの食生活は、比較的リバウンドを防げそうな、最小限の体力や気力が保てるかもしれない方法としてあえて推奨したいくらいです。
そもそも、本格的な瘦せ姫が目指し、到達する体型はBMI15以下、体重にして30キロ台、20キロ台というレベルの細さです。それが可能なのは、どんどんエスカレートしてしまう傾向があるからでしょう。たとえば、摂取カロリーを減らすために弁当箱を次々と小さいものに変えていったところ、最後には幼児用でも間に合わなくなってしまう、というように。
また、食べてよいものとよくないものの関係も逆転していきます。瘦せ姫が「許可食」と呼ぶ、食べてよいものがだんだん減っていき、ある人などはリンゴ1個で一日の食事を済ますような状態にまでいきました。英国に「一日1個のリンゴで医者いらず」ということわざがありますが、むろんそれだけで足りるという意味ではありません。彼女は最終的に入院させられてしまいます。
ちなみに、ダイエットの専門家によれば「油を吸った炭水化物がいちばんタチが悪い」のだとか。ラーメンなどがそうですが、制限型を徹底したい瘦せ姫にとっては、そんなものはもう食べ物ですらなく、ゴミ、それも有毒ゴミでしょう。
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