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ド底辺から業界3位までDDTを育てた男・髙木三四郎が語る「ど底辺から立ち上がる方法」

(写真・髙木三四郎選手のXより引用許諾済)

 

■長期休養から復活。そして氷河期世代へのメッセージ

 

 2024年7月。髙木三四郎は長期休養に入る。プロレスラーとして表舞台から一時的に撤退し、身体の治療をしながらDDTと東京女子プロレスの運営を続けていく。プロレスラーの長期休養は引退と同じと思われている。大仁田厚を筆頭に引退しても復帰するプロレスラーがいる一方、「長期休養」と宣言しながら事実上の引退状態にいるレスラーが多いからだ。蝶野正洋、川田利明は長期休養と言っているが事実上引退している状態だ。髙木も同じようになるのだろうか。

 

 「本当に体調が良くないので、ちょっとお休みして、一回リフレッシュしたいなと思っていました。それで今年1月に発表させていただいたんですけど、 そんなに長い間休養するわけじゃなくて、単純にまず体調を整えようって感じです。

 年齢的に身体のあちこちにガタが出てきてるんで、 そういうところもよくしようと。食事を改善して、身体絞るとか、色々とやらなくちゃいけないなっていう中での話だったんですね。

 今は、ちょっとしたメモリアルマッチみたいなのが、あちこちで組まれている状況ですけど『そうじゃないんだけどな』と思って過ごしています(笑)

 自分は休養を経てちゃんと復活したいし、出てきたら生まれ変わった髙木三四郎を見せるぐらいの勢いでやろうと思っています」

 復活するときの舞台の希望はあるのか、髙木に聞いてみた。

 「やっぱり都電プロレスや新幹線プロレスじゃないですけど、世間の話題になるようなことで復帰したいなっていうのはあります。ただ、今はどんなことをするのか全然考えてなくて、何しようかなっていう状態です。ここまで休みなくやってきたんですよ。土日は試合があって、月曜から金曜まで会社の経営という日々でした。そうすると本当に休みがない。家族とかと過ごす時間もない。それが1番大きかったですかね。

 休養したら家族とゆっくり過ごしたいというのはもちろんあります。でも個人的には、1回プレイヤーはちょっと離れないときついなみたいなところですね」

 休養に入る髙木にプロレス界の展望については?

 「プロレスは対立概念がないと盛り上がらないじゃないですか。他団体ですけどEVIL※10)選手なんかは対立概念をちゃんと作り出していますよね。ああいう選手がDDTからも出てほしいというのはあります。やっぱり憎まれ役、悪い奴がいないと。アスリート性や、一致団結感で押し出している団体もありますけど、全部が全部そうじゃなくてもいいと思います。でもプロレスってやっぱりヒールとベビーフェイスの戦いだと僕は思ってるけどね。そういうのが出てきたら変な人気が出るかもしれません」

 そして新しいヒールレスラーの誕生はプロレス界全体の課題と述べた。そんな髙木に世代的には少し下になるが氷河期世代へのメッセージをお願いしてみた。

 「彼らは40代から50代半ばだと思うんですけど、今って、日本自体の景気が良くなくて、元気がない状態ですよね。その中で核にいる40代、50代は70年代80年代と日本が良かった時代に生まれた子たちじゃないですか。そう考えると、自分たちが大人になったら良かった時代じゃなく、悪い時代になってる。それは彼らにとってなかなか理解できないかなと思います。

 でも、やっぱりこの世代が引っ張っていかないと景気も良くならないと思いますし、そうしないと、もっとダメになるんじゃないかな。だからこの世代がそんなに景気に左右されることなく、勢いを見せていかないといけない。僕らはそういう人たちに対して、ちょっと元気や勇気を与える仕組みかなと思っています」

 プロレス界の底辺から這い上がってきた髙木は、会社が大きくなった今でもチャレンジ精神を失わずに前を向いて進んでいる。夢であった東京ドーム興行。無人では開催できたが、今度は観客を呼んで開くために様々なアイデアを練っているだろう。その夢が叶うとき、きっとリング上で「大社長(副社長)」コールを受けているに違いない。

 

※10 EVIL:新日本プロレス所属のヒールレスラー。内藤哲也が作ったユニットL.I.J所属中は怪奇派レスラーとして人気だったがヒールに転向。自らヒールユニットH.O.Tを立ち上げた。

 

文:篁五郎

 

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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