「なぜ新任教師は命を絶ったのか」残業や叱責が原因? 〝学校現場の問題〟は社会の鏡である【西岡正樹】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「なぜ新任教師は命を絶ったのか」残業や叱責が原因? 〝学校現場の問題〟は社会の鏡である【西岡正樹】

 

■学校現場の劣化したコミュニケーションを立て直せるか

 

 春日市の「新任小学校教諭」へ向けた「先輩教師ら」の指導や叱責は、自分たちの価値観を「新任小学校教諭」に押し付けたということにすぎません。「先輩教師ら」の思いの中に「新任小学校教諭」を「困らせてやろう」「自死に追い込もう」など微塵もなかったはずです(そう信じています)が、「新任小学校教諭」の気持ちをくみ取ろうという思いもなかった。やはり、言葉が一方通行では、言葉がどのように伝わっているか分からないのです。

 「先輩教師ら」の思いはどのようなものであったかはさて置き、学校という場でのコミュニケーションが一方通行では、教師にとっても、子どもにとっても、学びの場とは言えません。私はそう思っています。お互いの思いや考えを交流することによってお互いの思いや考えはしっかりと伝わり、お互いの行き違いを修正することができるのです。「新任小学校教諭」が話せるような場を「先輩教諭ら」はより創るべきでしたし、「新任小学校教諭」は自分の思い考えを伝える意識をより大きく持つべきでした。そうすれば、状況は変わっていたのかもしれません。

 異なる思いや考えを持った多くの人たちが、共に生きていくのは簡単なことではないと思います。さらに、お互いが分かり合えるようになるには大きな困難を伴います。しかし、学校というのは、分かり合えなくても一緒にやっていかなくてはならない所なのです。それは教師同士であっても、子ども同士であっても、教師と子どもの関係であっても同じです。

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西岡正樹

にしおか まさき

小学校教師

1976年立教大学卒、1977年玉川大学通信教育過程修了。1977年より2001年3月まで24年間、茅ヶ崎市内の小学校に教諭として勤務。退職後、2001年から世界バイク旅を始める。現在まで、世界65カ国約16万km走破。また、2022年3月まで国内滞在時、臨時教員として茅ヶ崎市内公立小学校に勤務する。
「旅を終えるといつも感じることは、自分がいかに逞しくないか、ということ。そして、いかに日常が大切か、ということだ。旅は教師としての自分も成長させていることを、実践を通して感じている」。
著書に『世界は僕の教室』(ノベル倶楽部)がある。

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