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ディズニーランドのある街は治安が悪い?

犯罪発生率からみたカジノとディズニーランド

 

皆さんはカジノのある街に住みたいと思いますか? たくさんの人が集まる観光地では犯罪が増えたり、治安が悪くなると言われます。では、巨大観光産業であるカジノとディズニーランドはどちらが「より犯罪の起こる街」なのでしょうか。

 

「カジノの街」を覆い隠す、論理のすりかえ

 

現在、カジノ推進派がカジノによる治安悪化を否定する手法は、次の2つである。一つは、犯罪を誘発するものとしてのカジノの存在を免罪する手法である。例えば、良く挙げられる具体的事例が、ディズニーワールドを抱えるフロリダ州オーランド市とカジノの街であるラスベガス市の人口当たりの犯罪発生率である。

 

オーランド市の犯罪発生率がラスベガスを上回っている事実を示して「各都市の持つイメージとは裏腹に『ディズニーの街』オーランドが、『カジノの街』ラスベガスよりも圧倒的に治安が悪いという側面が見えてくるのです」(木曽崇『日本版カジノのすべて』)として、「カジノの街=犯罪都市」という先入観は事実に基づかない誤解であるとされる。

 

犯罪の増大は、大勢の観光客を呼び込む観光サービス業にとって共通の現象であり、そしてディズニーランドですらこれだけの犯罪を誘発するのであるから、カジノだけを犯罪を増大させる「悪の産業」視するのは誤っているというわけである。

 

第2は、観光客の増大による一定エリア内での犯罪発生数の増大が生じた場合でも、観光客数を分母として犯罪発生率を計算することで、犯罪発生率そのものもカジノ開設によって増大したわけではないとする手法である。

例えば、アトランティックシティの犯罪数はカジノ開設後数倍に増えたが、来客数を分母とした場合低下しているとされる。カジノの来客数が増大すれば、当然カジノ内またはカジノ周辺での犯罪発生数は増大するのは当然であり、犯罪数だけを強調するのは誤っているというわけである。

 

しかし、このような主張は意図的なデータ操作と論理のすり替えによるごまかしとも言うべきものである。例えば、カジノの街としてラスベガス、そしてディズニーの街としてオーランドを比較して、あたかもカジノよりもディズニーの方が犯罪の誘因となるかのような主張を行っているが、表3-11に見るように、同じくカジノの街であるアトランティックシティとディズニーの街であるカリフォルニア州アナハイムの犯罪発生率を見ればまったく違った結論となる。

つまりアトランティック市のほうがオーランド市よりも犯罪発生率は高く、そしてアナハイム市の方がラスベガス市よりも犯罪発生率は低いのである。

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鳥畑 与一

とりはた よいち

1958年生まれ。静岡大学人文社会科学部経済学科教授。大阪市立大学経営学研究科後期博士課程修了。専門は国際金融論。著書に『略奪的金融の暴走:金融版新自由主義のもたらしたもの』(学習の友社、2009年)、「グローバル資本主義下のファンド」(野中郁江他編著『ファンド規制と労働組合』序章、新日本出版社、2013年)、「カジノはほんとうに経済的効果をもたらすのか?」(全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会編『徹底批判!! カジノ賭博合法化―国民を食い物にする「カジノビジネス」の正体』第2章、合同出版、2014年)などがある。


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