リオ五輪感動の影で女子アスリートたちがぶちあたる「生理は敵」の世界…フェアリージャパンも例外ではなかった
摂食障害になった女性たちとの30年余りの交流の軌跡が話題に!
たしかに最近、日本産科婦人科学会が国立スポーツ科学センターと共同で行なった調査結果でも、それは裏付けられています。女子大生を中心とする、陸上の中・長距離や体操、新体操のアスリートのうち、無月経の人の割合は一般の女子大生に比べ10倍近く。また、疲労骨折の経験者は、陸上の中・長距離選手でふたりにひとり、体操や新体操選手で3人にひとりに達していました(註2)。
前出の『魂まで奪われた少女たち』には、米国の学者がある大学の陸上の中・長距離選手を対象に、月経の有無による骨密度の違いを比較調査しようとしたところ、チーム全員が無月経だったため、他の大学にも協力を求めなくてはならなくなったという話が紹介されています。
痛々しいのは、この疲労骨折が競技の本番中に起きてしまうケース。新体操では日本代表の遠藤由華がワールドカップの演技中に太ももを疲労骨折して、第一線から退きました。本人はツイッターで「骨密度は正常値以上だったけど、それでも折れた」と言っています。10代の頃に食事制限による月経異常をきたしていたそうなので、その影響かもしれません。
ちなみに、新体操日本代表の愛称は「フェアリージャパン」。バレエにおける「妖精との競いあい」に限界があるように、生身の人間が妖精のように軽やかに舞おうとすれば、かなりのリスクがともなうわけです。
もうひとつ、衝撃的だったのは、高校駅伝の全国大会最終区で起きた出来事です。その選手は中学時代から全国で活躍していて、あどけない容姿ともども注目していただけに、その「瞬間」のことは今も脳裏に焼きついています。
彼女はひときわ小柄で、3年生でありながら、身長も体重も全選手中、一、二を争う少ない数値。しかし、持ちタイムはトップクラスで、チームも優勝候補でした。そして、彼女はアンカーを任され、トップでたすきを受け取ります。
しかし、チームの初優勝に向けて走る途中、異変が生じました。突然、彼女の腰がガクッと落ちたと思ったら、その表情が苦痛にゆがんだようになり、それ以降、足を引きずるような走りに。そのうち、涙があふれ出し、泣きじゃくりながら、それでも走り続けます。もちろん、後続のランナーは容赦なく抜き去っていき、ようやくゴールにたどりついたときには、6位にまで落ちていました。
さらに驚かされたのは、その異変が股関節の疲労骨折だったことです。普通ならとても走れない大ケガで、ゴールできたことが奇跡でした。興奮状態によって多少は感覚が麻痺していたかもしれませんが、想像を絶する痛みだったことでしょう。