「あれだけ食べて、なぜ太らないの?」
瘦せてるのに、大食いの彼女。
フードファイター美女の謎。
摂食障害になった女性たちとの30年余りの交流の軌跡が話題の書に!
ただ、いずれの場合も、摂食障害が大食い能力に影響していたという意味では似ています。この関係性に着目したのが、テレビ批評を得意としたコラムニストのナンシー関でした。大食い番組の大ファンだった彼女は、ひとりだけ砂糖水を飲みながら戦うスタイルだった赤阪が、ある大会で他の選手と同じウーロン茶を飲んでいるのを見て、
「赤阪さん、ちょっと治ってきてるか?」
などと、ツッコミを入れていたものです(註2)。
興味深いのは、過食嘔吐をカミングアウトした前出の瘦せ姫フードファイターも同じような見方をしていること。2年近くの入院生活を経て、別のブログを始めた彼女は、15年正月の大食い番組で有名なフードファイターが負けるのを見て、こんな感想を記しました。
「弱くなった。申し訳ないけど、それはとても喜ばしいことだと感じてしまった。彼女はもう、詰め込まなくても良くなったんだ。強迫的な食べ物からの呪縛から解き放たれたのかなって。弱くなったんじゃない。強くなったんだ」
さらに、テレビで目撃した瘦せ姫の食にまつわる異能といえば、個人的に忘れられないことがまだあります。『TVチャンピオン』のスナック菓子通選手権に出場した20代女性についてです(註3)。
もっぱらスナック菓子に関する知識を競うとはいえ、体力勝負の要素もあり、服の上からも細さがわかる弱々しい彼女はかなり苦戦します。というのも、店内を走り回って正解の商品を取ってくるようなクイズでは、最初に見つけても、すぐに追い抜かれてしまうのです。
また、第3ラウンドの舞台は遊園地のプール。水着姿の彼女が映った瞬間、視聴者は目を疑ったことでしょう。身長は平均前後に見えましたが、体重は30キロあるかないかというところ。本格的な瘦せ姫の水着姿が10分20分とバラエティ番組でオンエアされることなど、おそらく空前絶後です。
それでも彼女は、早食い早押し系のクイズは得意でしたし、何より知識量でほかを圧倒していました。見事、優勝して、翌年はぶっちぎりで連覇。しかし、数年後、同じ菓子系の選手権(たぶん、スナック&駄菓子通選手権だと思われます)に出場した際の雰囲気は前とはかなり変わっていました。
健康的な細さになり、たしか恋人ができたと紹介されていたような……。そして、結果はあっけなく敗退。これもまた、心身が普通の状態に近づくことで異能が低下したということなのかもしれません。