札幌・すすきのラブホテル殺人事件 〝怪物〟と化した3人家族の向こうに見えた映画【小林久乃】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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札幌・すすきのラブホテル殺人事件 〝怪物〟と化した3人家族の向こうに見えた映画【小林久乃】

 

◾️映画『怪物』を観て考えた自分の中の怪物

 

 すすきのの事件とほぼ同じ時期に、映画『怪物』が公開されている。第76回カンヌ国際映画祭にて『脚本賞』『クィア・パルム賞』を受賞するヒット作となった。私も映画館と、最近また仕事の依頼があったので動画配信サービスでも鑑賞した。あらすじはこうである。

 

“麦野早織(安藤サクラ)は夫を亡くして、ひとり息子の湊(黒川想矢)を育てている。ある日、湊が学校で担任の教師・保利道敏(永山瑛太)からいじめを受けているのでは? という疑惑が浮上し、校長室を訪ねる。校長をはじめ、学校の対応ははっきりとしない。そればかりか早織の学校に対する疑問はさらに増大していく。同時に湊の友人関係や心理にも変化が生じていた”

 

 映画公開時、会う人とよく『怪物』の話題になった。そこで出るのは一体誰が怪物なのかという推察だ。夫の交通事故で孫を亡くしたと言われている校長。保利をあっさり捨てた恋人。湊と仲のいい星川依里(柊木陽太)。依里をネグレクトしていた父親。それとも早織? 意見はそれぞれに違った。

 印象深い演技だったのは校長・伏見真木子役の田中裕子。何かを秘めているはずなのに、真木子の言動はあまりにも淡々としすぎていた。では登場人物から怪物が誰なのかを推測すると……出演者全員に加えて、自身も怪物のように感じた。そして映画の向こう側に件のすすきの殺人事件がぼんやり浮かんできた。 

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小林久乃

こばやし ひさの

コラムニスト、編集者

出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」(K Kベストセラーズ)にて作家デビュー。最新刊は趣味であるドラマオタクの知識をフルに活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」(青春出版社刊行)。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディア構成、編集、プロモーションなどを業とする、正々堂々の独身。最新情報はhttps://hisano-kobayashi.themedia.jp

 

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