「胸も生理もいらない」
〝瘦せることがすべて〟の女性が
あなたの身近にもいませんか。
摂食障害になった女性たちとの30年余りの交流の軌跡が話題の書に!
「私は胸が大きくなる前に拒食になったので、成人するまで、胸は小さいままでした。でも最近、体重が増え、胸がふくらみ始めたことに戸惑っていて、20キロ台に戻りたくなっています」
また、ある人はこう言いました。
「10歳くらいで拒食になれば、一生、生理を経験しないで済むこともあるってことだよね。私はかなりの低体重でも生理が来てしまうから、うらやましいな」
こうした葛藤は、世の多数派からはなかなか理解されにくいものでしょう。昔より価値観が多様化してきたとはいえ、第二次性徴を否定するような生き方はあまりよしとはされません。女性の自己実現のあり方としても、結婚し、出産し、というのがまだまだポピュラーです。そんななか「胸も生理もいらない」という、種の存続を妨げるような瘦せ姫型の自己実現は、少数派として異端視すらされかねないものです。
ただ、それはあくまで「多数」と「少数」の問題だったりもします。結婚しない人が、出産しない人が、世の中の半分以上になれば、結婚する人、出産する人との立場はたやすく逆転してしまいます。
まして、誰も結婚や出産をしない世の中になれば——。
そんな世の中を描いた小説が存在します。SF作家・小松左京の『オルガ』(註1)です。舞台は、40世紀。そこでは文明の極端かつ変則的な発達により、子作りは科学が代行してくれるようになっています。便利で清潔で無痛なものをよしとする人類の感性が、性行為や出産を野蛮なものとして嫌うようになり、また体力的にもそれに耐えられなくなった結果です。
それでも、快楽というおいしいところだけは残したい、ということで「オルガ」という液体が生まれます。これをふたりないしひとりで飲むことにより、生殖とは完全に切り離された性的興奮を味わえる仕組みです。
注目すべきは、前半に登場するヒロインの容姿。一部を引用してみましょう。